YOASOBI「夜に駆ける」をダイアトニックコードで楽曲分析してみよう!

[PR]ギターやベースを始めよう♪お得なビギナーセットをチェック!
目次

はじめに

こんにちは。意識低い系ミュージシャンの龍ちゃんです。
「力を抜いて音楽をする」をモットーに音楽に役立つ情報を発信しています。

楽に楽しく音楽ができるようになるには音楽を読めるようになることが大事です。
ここでいう読めるというのはただTAB譜の数字を追いかけたりコード譜を追いかけたりすることを言っているわけではありません。
コード進行、スケール、キーなど、演奏に必要な様々な情報をくみ取ることができるということです。

今回はそのための第一歩として、ダイアトニックコードをもとに楽曲を分析してみようというテーマで書いていきます。
音楽の専門用語を理解したうえで、「実際にそれをどのように使って分析をしていけばいいのか?」ということを一つ示してみたいと思います。

完全な初心者の方はおそらく不明な専門用語が多数でてきますので、まずは「音楽理論はまずはこれを読んでから!【初心者脱却パッケージ】」を読んで専門用語を理解することから始めてください。

ダイアトニック早見表 こちらを印刷しておくと便利です。

ダイアトニックコードで大体分析できる

さて、音楽理論と聞くとなにやらジャズの難しい技とか「裏コード」「代理コード」「分数aug」などなど、高度なテクニックを勉強するものというイメージが強いですが、何事も基本が大事というのはここでも変わらず、容易に理解、演奏が可能であるダイアトニックコードのふるまいをキチンとみてあげることが大事になってきます。

理由としては、上に挙げた難解な小技も結局は基本となるダイアトニックコードが何らかの形で変形したもの、もしくはダイアトニックコードで築かれた土台に小技的に挟むものにすぎないからです。

世に出ている初心者用の作曲レクチャー本などは大抵いきなりツーファイブの話をし始めたり、代理コード裏コードの話をし始めたりします。
はっきり言ってそのような学習順序では挫折して当たり前です。

ダイアトニックコード分析は今後シリーズ化していこうと思うのですが、やることは単純です。
曲のコードをダイアトニックコードに変換してその曲の基本がどのような演出で作られているかを見ていくことになります。

こういった分析を行えるようになると、小技と基本型の区別がつくので、コード進行が頭に入って来やすくなります。

今回の楽曲分析のお題はYOASOBI「夜に駆ける」

動画引用元:夜に駆ける

U-FRETより画像引用 https://www.ufret.jp/song.php?data=41

(動画時間の1:15~1:30)

こちらは大ヒット中のYOASOBI「夜に駆ける」サビの前半です。かなりわかりやすい構造になっている曲なので取り上げました。早速分析していきましょう。

太い線が一小節、細い線が二拍です。

ダイアトニックコード分析でやることは、まずコードネームから構造を探るということ。よく観察すると、一段目と三段目にそれぞれA♭→B♭→Gm7→Cmというパターンが二回登場しています。二段目と四段目はA♭→G7までが共通していますね。すべての段に言えるのはA♭からコード進行が始まっているということです。

次に、キーを判定していきます。これには様々な方法があるのですが、できるようになってほしい方法を紹介します。

簡潔に言うと耳で聞いたのちコードネームの一つ目を見るだけで判定できる方法です。

これまでもたびたび紹介していますが、JPOP進行と呼ばれるコード進行が存在します。

Ⅳ→Ⅴ→Ⅲ→Ⅵというコード進行です。例えばキーCだとF→G→Em→Am、キーGだとC→D→Bm→Em…となるコード進行です。

これを聞いた感じで即判定できるようにしてしまいましょう。

コード進行はひとかたまりで特有の情緒を持ちます。コード進行のひとかたまりに対して、その名前(自分で勝手に名付けてもよい)と情緒を対応させて耳で判定できるようにするのです。
感覚としては英語の熟語を覚えたりするのに近いですね。最初は難しいかもしれませんが、意識して聞くようになると割と簡単に耳で判断できるようになります。

他に有名どころとして「カノン進行」「小室進行」などがあります。
これらをひとかたまりで耳で聞いてパッと判定できるようになるとかなり違ってきます。

そしてこれはJPOP進行に話が限定されてしまうのですが、採用されている曲数が圧倒的に多いです。
サビのコード進行はⅠ、Ⅳ、Ⅵから始まるパターンがほとんどなのですが、その中でもポップスにおけるⅣから始まるコード進行の割合はかなりのものです。
YOASOBIのようなネット発信の音楽はなおさらで、曲そのものを聞く前から「これはJPOP進行だな」とあたりをつけられたりします。(ネガティブな意味合いではないです)

もう一つコード進行を紹介しましょう。
このコード進行が使われている椎名林檎の丸の内サディスティックを略して「丸サ進行」とか、元ネタであるジャズスタンダードの曲名から「JUST THE TWO OF US進行」などと言われたりします。

Ⅳ→Ⅲメジャー→Ⅵ→Ⅰというコード進行です。
こちらも最近圧倒的に多いです。
個人的には単純にループさせてもカッコイイコード進行のナンバーワンだと思います。JPOP進行と同じくⅣから始まるので、併用されることも多いです。

ちなみにさらっとⅢメジャーとかいうダイアトニックではないコードを出してしまいましたが、これは非常によく使われる小技の一種です。
現時点ではⅢがメジャーになるとなんかエモい、ぐらいに捉えていればOKです。

さて、「夜に駆ける」に話をもどしましょう。
耳で聞いて「JPOP進行使われてるな」「基本のループはⅣから始まってるな」だけ読み取れればあとは簡単です。JPOP進行がA♭から始まっているので、A♭がⅣに当たるキーを探せばOK。

Ⅳの列を探してA♭が見つかったらそのまま左へ行けばキーがわかります。

キーはE♭ということでよさそうです。これをもとにダイアトニックコードの番号をあてはめていきましょう。

仮説は見事的中したと言っていいでしょう。

Gm7はダイアトニックコードじゃなくない?

と思われた方は鋭いです。
実はM7やm7というのは言ってしまえば単なるおしゃれ、装飾品であり、ついてもダイアトニックコードとしての機能は変わりません。よってGm7とGmは機能が変わらず、キーE♭ではⅢとして扱えるのです。(詳しくはコードネーム解説編で)

ローマ数字の並びを見ると、JPOP進行(Ⅳ→Ⅴ→Ⅲ→Ⅵ)と丸サ進行(Ⅳ→ⅢM→Ⅵ→Ⅰ)っぽい何かの組み合わせで出来ていることが分かると思います。

音楽理論初学者は感覚に頼りたくないからこそ学んでいるので「耳に頼らずできる方法はないの?」となるのは理解できますが、結局演奏するために学んでいるわけですから耳を使った方がよいです。
どちらにせよ慣れればコード進行を見た瞬間に「キーE♭のJPOP進行」と判定できるようになります。

さて、基本構造が分かったうえで小技とそれ以外を区別して分析してみましょう。
ダイアトニックコードでないコードは読んでそのまま「ノンダイアトニックコード」と呼ばれ、小技としてくくりだされます。

(Ⅲ7というコードについて。コードネームの決まりを知っていたらわかるのですが、機能的にはⅢのメジャーと同じです。しかしⅢM7とは明確に違います。この記事ではⅢ7はⅢメジャーと同じものとしてみていきます。)

ⅢメジャーとⅤマイナーというノンダイアトニックコードが挟まれています。
それぞれの意味合いを見ていきましょう。

先ほど上で述べたようにⅢメジャーはノンダイアトニックコードなので小技の一種ですが、そのなかでも一番扱いが簡単かと思われます。
Ⅲをメジャーにすることで緊張感がより高まるという程度の認識でOKです。
ⅢはもともとⅥやⅣに引きつけられる性質があるのですが、Ⅲメジャーになるとそれがより一層強まります。
ポップスで感情を揺さぶるような響きは大体Ⅲメジャーが絡んでいます。

二つのⅢメジャーが登場しますが、一つ目はその後にⅥ、もう一つは途切れてしまっていますがサビの後半なので前半の頭と同じくⅣが来ます。
どちらも哀愁を誘うような雰囲気がありますが、一つ目はあくまで丸サ進行の一部という機能があり、二つ目はⅢメジャーで緊張感を引っ張って引っ張ってサビ後半へ突入するためのもの、すなわち緊張感の演出要因という意味合いがあります。

Ⅲメジャーはダイアトニックコードに味付けするならまず候補にあがるというぐらいには使いやすいので、様々な曲に登場するⅢメジャーがどのように活躍しているかをぜひ観察してみてください。

次にⅤマイナーです。
この子は非常に地味ですがいい働きをします。
簡単に使い方だけ説明してしまうと「Ⅰの後にⅣが来る場合、そのⅠの前に挟んでおしゃれにできる」というようになります。
コード進行を見てもらえればこの通りになっているのが分かりますね。
本来丸サ進行はⅣ→Ⅲメジャー→Ⅵ→Ⅰですが、その後にJPOP進行のⅣが来ているので、丸サ進行の最後のⅠの手前にⅤマイナーを挟んでおしゃれに聞かせることが可能になっているわけです。

「なんで挟めるの?」ということを説明するにはジャズの「ツーファイブワン」や「リレイテッドツーマイナー」などという仰々しい響きの知識が必要なのですが、ここではとりあえず「Ⅰの後にⅣが来る場合、そのⅠの前にⅤマイナーを挟んでおしゃれにできる」で疑問を納めておいてください。
今後説明します。
音楽理論を学ぶ上で「なんかよくわからんけどそういうもんが使えるらしい」の精神は大事です。
楽しく演奏できればいいので。

「夜に駆ける」サビ前半の読み方をまとめましょう。
「キーE♭のJPOP進行と丸サ進行が基本。
丸サ進行の終わりに小技のⅤマイナー、最後は後半に向けて緊張感を高めるⅢメジャー」といったところでしょうか。
ただ頭からコードを一つ一つ追っていくよりもこちらの方が効率的ですね。

小技は実際に使ってみよう

基本形と小技という構造を覚えるためには、実際にとある基本のコード進行に小技をどうやったら挟めるかを試してみるのがいい方法です。
同じコード進行を別のキーで演奏してみるだけでもいい練習になります。

F→G→Em→Am→F→G→C→C(→F…)

同じコード進行を二回繰り返すサビ、という想定で、後半はカッコで省略してあります。
このキーCのコード進行に今回学んだⅢメジャーとⅤマイナーを足してアレンジしてみましょう。
まず数字に変換します。

Ⅳ→Ⅴ→Ⅲ→Ⅵ→Ⅳ→Ⅴ→Ⅰ→Ⅰ(→Ⅳ…)

ⅢのあとにⅥが来ていますから、ここのⅢをメジャーにしてあげると哀愁が強まりそうです。
また、最後のⅠはⅣに向かっているので、その前をⅤマイナーにしておしゃれにすることもできます。

Ⅳ→Ⅴ→ⅢM→Ⅵ→Ⅳ→Ⅴ→Ⅴm→Ⅰ

アレンジできました。
なかなかいい感じに情緒が加わったのではないでしょうか。
ただ注意点が一つあります。
今回はできるところすべて小技にしてみましたが、何が何でもやればいいというわけではないということです。
学んだことを使いたくなるのが人間なので、特に音楽理論が少しわかり始めたぐらいの段階は小技を使いすぎてしまってかえって聞きづらくなるという現象が起きます。
シンプルイズベストの発想は忘れないほうが良いです。

[PR]ギターやベースを始めよう♪お得なビギナーセットをチェック!

まとめ

今回は「夜に駆ける」を題材に「コードの基本と小技を区別して読めるようにする」という実践をしてみました。
ポップスはほぼすべての曲においてこの方法論が通用します。
ジャズがルーツの人が作った曲などは非常に小技が多く難解に聞こえるのですが、それも、もとはダイアトニックコードの基本形があってこそのものなので、ひとつひとつ積み重ねていけばすべての曲において、作曲者の意図をくみ取ることが可能です。

そしてくみ取ることができれば、演奏や作曲が楽に楽しくなります。

まずは自分の好きな曲から分析してみましょう。
この分析記事はシリーズ化していきますので、リクエストも受け付けています

ダイアトニックコードに関する記事をもっと読む

楽曲分析に関する記事をもっと読む

記事が見つかりませんでした。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次