はじめに
こんにちは、意識低い系ミュージシャンの龍ちゃんです。
「楽に音楽をする」をモットーに音楽に関する情報を発信しています。
音楽理論の学習は専門用語を理解することができれば目的の八割ぐらいを達成できたようなものです。作曲を挫折してしまう原因として最も大きいのは専門用語を理解するのに別の専門用語が必要だったりすることです。
この専門用語解説編は理解できるまで何度もチェックすることをオススメします。
ここを乗り越えられたら本当に音楽が楽に楽しくなります。
今回は「スケール」編です。
「Cメジャースケール」とか「マイナーペンタトニックスケール」とかで耳にするアレですね。
この記事だけでもスケールというものについて理解できるようにはしますが、「音程」に関する記事を読んでもらうと理解がスムーズになると思われます。
まずはそちらの記事に目を通すことをオススメします
スケールとは?
スケールは日本語では「音階」と呼ばれます。
音階とは、ある音からそのオクターブ上の音までの間を、特定の秩序によって並べた音列のことを言います。
洗足オンラインスクールより引用
オクターブとは「完全八度」のことです。前回の音程の記事(音楽を楽にするには「音程」を知るべし!)を参照してください。とある音とオクターブ上の音というのは、周波数の比が1:2という関係になっています。非常に似たような音が出るんです。
どのぐらい似ているかということは、男性歌手と女性歌手が高さは違うが同じメロディを演奏できるということをイメージすればわかりやすいと思います。(「同じ音じゃん」と思った方は半分正解で半分間違いです。高さが違えば立派な違う音といえてしまいます。)
Cメジャースケールを見てみましょう。
こちらは、Cから一オクターブ上のCまでをとある特定のメジャースケールという秩序によって区切ったもの、ということです。
この「特定の秩序」というものが今回のポイントになります。
この秩序を変えてみると、同じ「Cから上のCまで」という枠組みでも、こんなスケールになります。
こちらはCマイナースケールというスケールです。
範囲は変わらずとも秩序が変わることで違うスケールになることはわかりましたね。
さて、このスケールを決定づける秩序とは具体的にどのように示すことができるか、すでにお分かりの方も多いと思います。
前回学んだ「音程」です。
つまりスケールとは、オクターブという範囲をどのような音程で秩序づけて区切っていくか、ということを表したものになります。
例えば、とある音から長二度、長三度、完全四度…というように、画像とそっくりそのままの音程で音を集めていくと「メジャースケール」というスケールになります。
スケールの歴史
ここで、「相対的な見方が本質である」ということを思い出してください。
とある基準からどれだけ離れているか、ということが時間芸術である音楽においては本質的なことになります。
それを示すために音程というものが存在する、というのが前回までの内容です。
しかし、とあるメロディを取り扱うときに、そのすべてを最初から「○○度、○○度…」というように記録していくのは骨が折れます。
それを解決するために、先人はとあるものを開発しました。
それが「ドレミファソラシド」です。
ここまでを歴史の流れとともに整理します。
紀元前の人々は音として聞こえる周波数帯を、前回紹介した区切り方を用いて、音程として取り扱えるようにしました。
その音程という概念は長い年月を経て各地に広がり、時はキリスト教が覇権を広げつつあった中世。
イタリアのとある教会では、Cから一オクターブ上のCを画像のような音程で区切ったものを用いて聖歌を歌っていました。
(ここで言うCとは、現在のCに周波数が限りなく近い音、という意味です。Cという名前すら当時はありませんでした。)
ですが、イタリアの音楽教師グイード=ダレッツォはそこで悩みを抱えていました。
当時は当然録音技術もありませんし、楽譜も未発達です。
音楽を初学者が習得する方法として、直接歌ってもらって覚える、いわゆる「口伝」しか方法が無かったのです。
これは物事の伝達手段として非常に非効率です。
ここでグイードは音の高さに名前を付けることを思いついたのです。
名前をつけることで紙に書けるようになるし、メロディそのもの以外の文字情報で伝えることが容易になります。
この「ドレミファソラシド」という名前は爆発的に普及し、その後の音楽の基礎になりました。
Cメジャースケールが様々な音楽理論の基礎になっている理由はここにあります。
(もし、「ドレミファソラシド」という名前を付けられたのが何かほかのスケールだったとしたら、それが音楽の基礎になっていた可能性もあるということです。)
「ドレミファソラシド」があることで、「カエルの歌」のメロディを「基準がC、そこから長二度上、そこから長二度上…」などといちいち書かずに、「ドレミファミレド」というように伝達することができるようになったのです。
また、「ドレミファソラシド」に関してややこしい一面があるので補足します。
私の書く記事では、音の高さそのものを示す際は「CDEF…」という英語音名を使います。
なぜそちらを用いるかというと、「ドレミファソラシド」はその由来からして、必ずしも「Cメジャースケール」を表すものではないからです。
つまり、とある基準があって、そこからどれだけ離れているかを取りまとめたものでしかない、相対的なものとしての由来を持っているのです。
いまいちピンと来ていない方も多いと思うので、具体例を用います。
「カエルの歌」のメロディは先述したように「ドレミファミレド」で示すことができます。
このドレミファミレドとは、翻訳すると「基準の音から完全一度、長二度、長三度、完全四度…」という意味になります。
つまりこれだけでは音の高さそのものが確定していないのです。
音の名前そのものを用いるならば、一般的なカエルの歌は基準がCなので「CDEFEDC」になります。しかし基準をDに合わせると「DEF#GF#ED」になります。これでもカエルの歌のメロディに聞こえます。理由はさんざんお伝えしているように、メロディの本質が音と音の高さの差にあるからです。
さらに下の音源では、「ピアノやギターでは演奏が不可能な音」、つまり半音のさらに半分の音を用いてカエルの歌を演奏しています。
すべて基準が違えど距離が一定なので「ドレミファミレド」として聞こえるわけです。
これらすべて「ドレミファミレド」です。
CDEFGABCとドレミファソラシドを同じものとして扱ってしまうとややこしくなる理由がお分かりいただけたと思います。
また、反対に、相対的な見方を支えるものとして、ドレミファソラシドは非常に重宝します。
前者の考え方を「固定ド」、後者を「移動ド」と言います。
名前の由来は、読んで字のごとく「ド」、つまりとある基準が動くか動かないかという観点です。
移動ドでは、例えば「Dメジャースケールのソ」と言われたらDEF#GAと五つ「ドレミファソ」を数えて、Aになります。DメジャースケールのGはファになります。
(ほぼこういう使い方をすることはないですが一応の例として)
全ての音楽理論の基本でありピアノでもっとも弾きやすいドレミファソラシドについて重点的に説明しましたが、「スケールとはオクターブ間の音程を取りまとめたものである」ということへの理解が深まったのではないでしょうか。
スケールの種類
さて、スケールはオクターブ間の音程を取りまとめたもので、その音程によって醸し出される雰囲気が変わってくる、ということを解説してきました。
この章では無数に存在するスケールの中からかいつまんで紹介します。
今回は当たり前のようにここまで使ってきているメジャースケール、そしてそれとの雰囲気の違いを認識するのに最適なマイナースケール、最後に最も実用的であるとおもわれるペンタトニックスケールを紹介します。
メジャースケール
改めて、メジャースケールについての紹介です。
図で示しているのは「Cメジャースケール」です。
さんざん説明しているようにメジャースケールの本質とはすなわち距離の集合体であるので、基準が変われば当然構成音も変わります。しかし聞こえ方としては同じです。
先ほど紹介したような経緯があって、メジャースケールは音楽の基礎になっています。
どんな音楽理論も、はたまた五線譜さえも、メジャースケールの存在を前提にして作られています。
基礎の基礎すぎて「どのような雰囲気を醸し出しているか」と聞かれるとちょっと返答に困るかもしれません。
ここでも相対的な見方が大事になってきます。
つまり他のスケールを聴いて初めてメジャースケールがどんな特性を持っているかということを認識できるのです。
一旦次いきましょう。
マイナースケール
どうでしょう。
どちらも「とある基準から完全八度」という範囲は変わっていないのに、醸し出される雰囲気が大きく変わっています。
スケールとは基準からの音程を取りまとめたものですから、当然この違いの原因も音程になります。
どこが違うかといいますと、
ご覧の通り、三度と六度がそれぞれ長、短になっています。
つまりここがそれぞれ半音一つ分狭いか広いかという違いですね。
メジャーとマイナー、日本語に訳すとそのまま長と短になります。
メジャースケールはマイナースケールに比べて「長い」部分があるので、メジャースケール。
逆もしかりです。
(マイナースケールに関してはもう少し補足説明したいことがあるのですが、今回はスケールによって情緒が違ってくる一例として紹介したかっただけなので割愛します。今後マイナースケールを掘り下げた記事を書きます。)
さて、メジャースケールとマイナースケールというものを紹介してきましたが、実はこの二つはポップスやロックの演奏の上でもっとも実用的というわけではないです。
ポップスはそもそもエレキギターの誕生をルーツとしているわけですが、エレキギターでこの二つを弾こうとすると、かなり弾きづらいんです。
エレキギターで弾きやすいスケールは必然的にポップスの雰囲気を作り出す一要素になりえるということは想像がつくと思われます。
それが次に紹介する「ペンタトニックスケール」です。
ペンタトニック(ブルース)スケール
音源は順にCメジャーペンタとAマイナーペンタです。
ご覧の通りギターで最も弾きやすいスケールが「ペンタトニックスケール」になります。
ペンタはラテン語で5、トニックは音を示しています。五音音階、という意味ですね。
スケールとはすなわち完全八度の差の間をいかに区切るかなので、別にオクターブ上をのぞいて七音じゃなくてもいいわけです。
「メジャーペンタトニックスケール」と「マイナーペンタトニックスケール」の二種類があります。
先ほどの例にならって、前者は一度と三度の音程が「長三度」、後者は「短三度」のため、そういった名前がついているんです。
さて、ここでややこしいポイントが出てきます。
スケールの構成音自体は五つしかないのに、音程は変わらず「完全八度」とか「長三度」とかで表されています。
これが「メジャースケールが音楽理論の基準である」ということの意味です。
ペンタトニックスケールの場合は基準が新たに作られて、基準から数えて二番目のCの音が二度になるわけではなく、イメージとしては、メジャースケールから特定の音が抜け落ちているという具合で、度数が割り振られます。
いくらギターで弾きやすいフレーズだからといって、ギターで少々弾きづらいメジャースケールが基準にないと、「度数」についての理解ができないんです。
音楽理論の難しいポイントがここです。
ポップスの理論がクラシック音楽の理論に依存してしまっているんです。
こればかりは仕方ないことなのですが、鍵盤があることでかなり理解がしやすくなるので、弦楽器しか家にないという方はこの際に鍵盤ハーモニカでも購入してみてはいかがでしょうか。
スケールの話に戻ります。このペンタトニックスケールはとあるアレンジが効きます。
マイナーペンタトニックスケールの五度の音を半音下げた音はブルーノートと呼ばれ、それを含めたスケールを「ブルーススケール」と言います。
(正確には半音下げた音とはわずかに違います。マイナーペンタトニックスケールの四度と五度の間になんか気持ちいい音がある、といった感じです。)
ここで前回紹介した相対的な見方が役に立っていることがわかると思います。
ブルーノートを単に「AマイナーペンタトニックスケールのときはE♭、CマイナーペンタトニックのときはG♭…」というように暗記していては日が暮れます。
「マイナーペンタトニックスケールの五度の音を半音下げた」という説明はとある基準とそこからの変化の様子、という情報で、相対的な情報を用いてスマートに説明できています。
音楽の技法を覚えていくためにこういった見方を身に着けておくのは、学習効率を上げるうえでとても大事です。
スケールそのものについての詳しい説明をしようとするとかなりの本数の記事が必要になるので、ここで理解してほしいことは、とにかく「メジャースケールが基準になっている」ということです。
ペンタトニックスケールのような音が八音ないスケールにおいても「度数」を用いることにも慣れていただきたく思います。
まとめ
さて、本記事ではスケールについて解説しました。スケールとは「完全八度という間隔をいかに分けるか」です。
スケールは「定規」という意味があるのですが、まさに音楽における定規のような役割があります。
専門用語をひとつひとつ自分の中に落とし込めるかどうかが今後の音楽ライフに大きくかかわってきます。
前回の「音楽を楽にするには「音程」を知るべし!」と合わせて繰り返し読んで、是非理解を深めてください。
次回は「キー」という用語について解説していきます。