こんにちは。リュウタロウ先生です。東京芸大休学中の作曲家です。
AI作曲はダメとかよく聞きますが…一方で、古今東西の音楽を学習して出来上がっているものなので、分析すると意外と作曲の勉強になったりします。
本記事ではAI作曲で作られた楽曲の音楽理論的側面を分析していきます。
今回取り上げるのは flehmen の「Lonesome Evolution」。バンド「サンダーポウ」の持ち曲で、キーは Am、BPM 100 のブルースロックです。この曲には、性格を決めている和音がはっきり一つあります。イントロで最初に鳴る、あの響きです。
甘いのに、濁っています
曲の冒頭で鳴るリフに使われているのが、7(9♯) という和音です。通称「ジミヘンコード」と呼ばれます。
この和音の面白さは、内部で矛盾していることにあります。7th の和音に、♯9th ― つまり半音上げた9度の音が乗る。この♯9th は、実は短3度と同じ高さの音です。つまり 長3度と短3度が、同じ和音の中に同居している。明るいはずの響きの中に、暗い音が刺さっている状態です。
理屈の上ではぶつかっているのに、鳴らすと不思議と気持ちがいい。甘さと濁りが同時に来る、独特の手触りになります。ブルースが「明るくも暗くもない」あの曖昧な色を持っているのは、こうした響きの積み重ねによるところが大きいのです。
【ワンポイント】なぜ「ジミヘンコード」と呼ばれるのか
この和音自体はジミ・ヘンドリックスの発明ではなく、それ以前からジャズなどで使われてきました。それでもこの通称が定着したのは、彼が「Purple Haze」の冒頭でこの響きを打ち出し、ロックの語彙として決定的に印象づけたからです。和音に人の名前がつくというのは、音楽史ではそう多いことではありません。
和声は動かさず、ペンタトニックで歌わせています
この曲の理論的な組み立ては、実にシンプルです。凝った転調も、複雑な進行もありません。ペンタトニック・スケール(5音音階)を主軸に、7(9♯) の色を効かせる ― ほとんどそれだけです。
素っ気ないようですが、これはブルースロックの正統な作法です。和音の情報量を絞ることで、余ったスペースがすべて「弾き方」に回る。同じ5つの音でも、どう溜め、どう伸ばし、どこで泣かせるか ― 奏者の癖と体温が、そのまま音楽の中身になります。理論で勝負しない曲だからこそ、演奏の人格が剥き出しになるわけです。
曲名が、そのまま設計図です
もうひとつ指摘しておきたいのが、タイトルです。「Lonesome Evolution」という言葉自体が、この曲の設計を言い当てています。
Lonesome(孤独)は、ブルースという音楽の中心にある語彙です。そして Evolution(進化)― ブルースがロックへと姿を変えていった歴史そのものを指しています。つまり曲名は、「ブルースが、ロックへ進化する」という音楽史の道筋をそのまま名乗っているのです。実際この曲は、ブルースの骨格を保ったまま、ロックの熱量で鳴っています。
歌詞もこの構造と噛み合っています。「孤独な進化 続ける僕」― 孤独と進化。タイトルの二語が、そのままサビの一行になっている。曲名・和声・歌詞が、同じことを別の言語で言っている状態です。
結
「Lonesome Evolution」を聴くときは、まずイントロの一音目に耳を澄ませてみてください。甘いのに濁っている、あの居心地の悪い心地よさ ― この曲の孤独は、最初の和音の時点ですでに鳴っています。
いかがだったでしょうか?
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→ flehmen「Lonesome Evolution」を聴く
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