はじめに
こんにちは。意識低い系ミュージシャンの龍ちゃんです。
音楽をやっていない人でも知っているであろう「キー」という単語についての記事です。
主にカラオケで目にするアレですね。
何となくモノ自体は知っているけど意味はよく分からないという方も多いのではないでしょうか?
音楽をやる上では「キー」という意味の理解が必須になります。
実は何となくの知識だと失敗をおこしやすい部分で、しっかり落とし込めると音楽に対する理解が深まるので、是非この記事を最後まで読んで、知識を確かなものにしてください。
音楽の専門用語の理解をひとつひとつ乗り越えていくことで音楽のレベルは確実に上がります。
しかし音楽の専門用語はお互いに結びついているため、なかなか単品での理解は難しいので、ぜひ「音程」「スケール」の解説も合わせてご覧いただきたいです。
キーとは?
キーは英語で書くとkey、つまりカギです。
カギがあれば当然それに対応するカギ穴があります。
さて、一旦話をキーから離して、音楽とはそもそもどのように形作られているか。
音楽は時間芸術なので、その本質は「基準となるポイントからどれほど離れていて、それによりどのように緊張と弛緩が演出されているか」ということになります。
それを分析するために必要な尺度として「音程」があり、またそれを取り扱いやすくするためにまとめた「スケール」というものがあります。
詳しくは「記事」を参照してください。
一行にまとめると「音楽の本質は音と音の高さの差」ということです。
ジェットコースターを想像してみてください。
とあるジェットコースターのウリを説明するとき、序盤の急上昇、少し焦らしての急降下、そしてダイナミックなループ……
などと言われますよね。
これらの急上昇、急降下、などの「開始地点からの高さの変化」がジェットコースターを形作る要素になっているわけです。
東京ディズニーシーの「センター・オブ・ジ・アース」を富士急ハイランドに移設することになったとします。
東京ディズニーシーのおおよその標高は海抜5m、富士急ハイランドは海抜830mです。
センターオブジアースの最高地点は地面から20mなので、海抜でいうと、東京ディズニーシーにある時は25mなのに対し、富士急ハイランドにある時は850mになるわけです。
数字としてものすごく巨大な差に見えますが、移設後も変わらず、どちらもセンターオブジアースとして楽しめますよね。
これは何故でしょう?
答えは簡単で、落差が変わっていないからです。
「高さの変化」は移設前と後で変わっていないのです。
標高が変わっても、ジェットコースターの本質である「高さの変化」は何も変わっていないから同じジェットコースターとして楽しめるわけです。
ジェットコースターを設計するときには高さの差を設計すればいいというところまではご理解いただけたと思います。
しかし実際にジェットコースターを設置するときはどうでしょうか?
当然設置する地面が無いといけません。
そして設置する地面の海抜によりジェットコースター上での海抜も決まってきます。
さて、音楽に話を戻します。
音楽の本質は「音と音の高さの差」なので、ジェットコースターと同じくその差を設計しさえすれば、設計図としては完成します。
かえるのうたは「ドレミファミレド、ミファソラソファミ…」と設計することができます。
この時点でメロディとしての機能は完成しています。この情報さえあれば
(ドレミファソラシドは相対音高、英語音名は絶対音高を示します。)
このように、聞き覚えのあるメロディが再現できるわけです。
しかし、実際に演奏するときはこれらすべてを用いることができるわけではありません。
伴奏なしの独唱なら距離の情報だけ、つまりジェットコースターの設計図だけでも全く問題ありませんが、音楽はほとんどの場合二人以上で行います。
聞ける音楽にするためにはそれぞれ距離の差だけが一致していても意味がありません。
下の音源はどちらも「ドレミファミレド、ミファソラソファミ」と歌えるメロディを重ねたものになります。
メロディの話をしましたが、伴奏になるコードに関しても、当然音の距離が本質になっています。
音楽では、和音という距離の集合体が伴奏として演奏され、その上に距離の集合体であるメロディが鳴るという構造になっています。
つまり、裏を返せば、伴奏とメロディのジェットコースターの設計図でも、それを建てる場所、基準が違うと音楽が成立しません。
基準を一つ定めることでようやくその上に様々な距離の集合体が構築され、聴けるものになります。
ここまで解説したらお分かりの方もいるのではないでしょうか。
キーは英語で書くとkey、つまりカギです。カギがあれば当然それに対応するカギ穴があります。
カギ穴とはこの「基準になるとある音」です。
ここに何が当てはまるのかを示したものがキーになります。
なぜカラオケで私たちが楽譜無しでも歌をそれなりに歌えるかというと、音と音の差を自分が歌うべきメロディとして認識しているからです。
そしてさらにその差の集合体の基準を上げ下げすることで、自分にちょうどいい高さで歌えるように調整するということもできるのです。
どのような役割を担うものなのかがわかったところで、具体的にどのように使うのかということを見ていきましょう。
メジャースケールが基本になっている
「スケール」についての記事で、「ドレミファソラシド」と名付けられたCメジャースケールというスケールが基本とされて音楽が形作られているという話をしました。
当たり前のように「Cメジャースケール」と言っていますが、この「C」、ここがキーの役割を担っているのです。
「Cメジャースケール」とはキーがCのメジャースケール、という意味です。
おさらいになりますが、とある音からその一オクターブ上までの音程を固有の区切り方で区切ったものをスケールと呼びます。
つまり一番最初に決まったとある音というものがそのスケールの基準になります。そこをキーとして指定してあげるわけです。
メジャースケールの音使いを基準として五線譜が発明されたり、様々な音楽が作られたりしたので、特にポップスではキーはメジャースケールの基準、一度、相対音高でドの音を示すことが慣習になっています。
key:D
と書かれていたらDメジャースケールの音が中心になっている、と考えてよいです。
たまにこんなのも存在します
key:G(Em)
カッコの中に追加で何かしら書かれているパターンです。
これにはメジャースケールとマイナースケールの関係性が大きくかかわっています。
前回メジャースケールとマイナースケールは情緒の違いを示す例として用いたのですが、実はメジャースケールをずらすとマイナースケールができる(逆も然り)という関係性があるのです。
メジャースケールの六番目の音から、その一オクターブ上の六番目の音までをつなげると、「六番目の音を基準にする」マイナースケールが出来上がります。
注意してほしいのが、例えばCメジャースケールの六番目の音はAなので、ずらして出来上がるのはAマイナースケールであるという点です。
Cマイナースケールではありません。
ちなみにCマイナースケールは、E♭メジャースケールの六番目の音がCなので、そこからオクターブ上のCをつなげることで出来上がります。
つまりこのカッコの中身は、「このキーではこのマイナースケールも使用できますよ」という意味です。
メジャースケールは明るく、マイナースケールは暗いのに、なぜ一緒に使えるのでしょう?
クラシックにおいては、メジャースケール中心の音楽とマイナースケール中心の音楽というものが明確に区別されています。
前者は明るく、後者は暗い印象となっています。
特にこれがはっきりしているのが古典派、モーツァルトなどの時代です。
メジャースケール、「長調」の音楽は明るく始まり、明るく終わる。マイナースケール「短調」の音楽は暗く始まり、暗く終わるという確固たる様式があります。
「長調」の曲
「短調」の曲
対してポップスにおいては、あくまで理論の基準をメジャースケールとしているだけであり、その曲が一様に「明るいか」「暗いか」という評価を下しづらいのです。
ポップスの楽曲の雰囲気を決定づけるのはキーではなく、あくまでキーという基準が決まったその上でどんなコードやスケールが使われるか、ということになります。
クラシックでキーG、日本語では「ト長調」というと、Gの音を中心に明るく始まり、紆余曲折ありつつも明るく終わる音楽を指します。
しかしポップスでキーGというとEマイナーのニュアンスを多用することも想定されていて、和音やフレーズの選び方によって、場合によってはずっと暗く聞こえることもあり得るわけです。
「じゃあキー:Gでも悲しい感じのする曲はキー:Emと書けばいいんじゃないの」という指摘も間違いではないです。
しかしそうしてしまうとかなり不便なんです。
これに関しては次の記事「ダイアトニックコード」を読めば、キーはメジャースケールで統一した方が圧倒的に便利な理由がわかると思います。
現時点で説明できる範囲でいうと、繰り返しになりますがポップスの音楽理論はメジャースケールを基本にして作られているので、マイナースケールに基準を合わせた場合の取り扱いがかなり面倒なのです。
この「ポップスにはメジャーとマイナーが混在する」という点に関しては、コードについて学習していくとより理解が深まると思います。
現時点ではこの字面だけの理解で大丈夫です。
また、「キーをどう判定すればいいのか」というテーマはかなり悩むポイントなのですが、これもコードについて学習してからでないと伝えることができないので、コードの記事のあとに書きます。
まとめ
さて、ポピュラーな音楽理論に思えてしっかりした理解が意外と難しい「キー」というものに関して説明しました。
音楽理論は専門用語の理解を乗り越えれば本当に見違えるほどレベルアップしますので、是非根気強く頑張ってください。
他の記事も読むことで理解がより深いものになるので、そちらも是非チェックお願いします。