東京事変「赤の同盟」のコード進行を分析!【難解曲も小技を知れば楽勝】

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はじめに

こんにちは。
意識低い系ミュージシャンの龍ちゃんです。
力を抜いて音楽をする」をモットーに音楽に役立つ情報を発信しています。

楽に楽しく音楽ができるようになるには音楽を読めるようになることが大事です。
ここでいう読めるというのはただTAB譜の数字を追いかけたりコード譜を追いかけたりすることを言っているわけではありません。
コード進行、スケール、キーなど、演奏に必要な様々な情報をくみ取ることができるということです。

ダイアトニックコード分析シリーズ第2弾。
前回は比較的わかりやすく分析可能なYOASOBIの「夜に駆ける」を取り扱いましたが、今回は「こんな難しい曲もダイアトニックコードを基本にして分析可能だよ」という例として、「私たちはどうかしている」主題歌、東京事変の「赤の同盟」を分析していきます。

動画引用元:東京事変 – 赤の同盟 (Official Music Video)

ドラマ主題歌とは思えない難解さです。
ちょっとは手加減してほしい。

完全な初心者の方はおそらく不明な専門用語が多数でてきますので、まずは「音楽理論はまずはこれを読んでから!【初心者脱却パッケージ】」を読んで専門用語を理解することから始めてください。

基本はダイアトニックコード

コード進行分析を行う上で忘れてはいけないのは、どんな難解なコード進行も結局はダイアトニックコード中心のコード進行から派生しただけであるという鉄則です。

今回取り扱う「赤の同盟」の作曲者であり東京事変のキーボーディストである伊澤一葉さんはジャズ畑出身なので、かなり難解なコードワークを自身の楽曲にて展開することが多いです。

しかしジャズもクラシックもポップスも基本は同じ。
緊張と弛緩の演出を行うということが音楽の本質ですから、どのような基準があってそれに対してどのように小技が使われているかということを見てあげるのが分析の基本になります。

ジャズの理論を応用した楽曲に関しては小技が次から次へとつながって原型が見えなくなっている場合が多々あるのですが、今回はどのように小技の山から基本となるコードワークを見定めるのかということをわかっていただければと思います。

この楽曲に関しては説明できるポイントが多すぎるのでいつかまとめて全体を解説するものを作りたいと思いますが、とりあえず今回は手短に、サビの前半を解説していきます。(動画の1:13~1:35)

キー判定をしよう

さて、コード進行を分析する上ではキーをまず判定しないと何も始まりません。

出典:U-FRETより画像引用 https://www.ufret.jp/song.php?data=68003

二小節ごとに太線、一小節ごとに細線が引いてあります。

ポップスのサビは多くの場合ⅠかⅣかⅥから始まります。
このサビはEmから始まっていますが、ⅠとⅣはそもそもメジャーなので、これがⅥである可能性が高そうです。

ひとまずEmがⅥである、つまりキーGであるとあたりをつけてみて、登場するコードを見てみましょう。

ダイアトニックコードに当てはまるコードが半分ぐらいなのでいまいち断定できないですね。

さて、ここで、小技の知識を使ってキーを判定していくというテクニックを使ってみます。
前回はキーを判定してから小技を分析していく方法をとりましたが、今回は逆パターンです。
小技を知ったのちにそれをコード進行の中に見つけて分析を進めていくという手法ですね。

ここで紹介する小技は二つ。「クリシェ」「変終止」です。

小技① クリシェ

クリシェとは簡単に言うと「コードのどこか一つの音のみが変化していく」というコード進行の小技のことです。
例えばこんなものがあります。

最初のコードの第五音が半音ずつ上がっていきます。
キーCでのⅠはCで、第五音はGです。G→G♯→A→B♭と半音ずつ上がっていっています。

ビートルズの「All you need is love」やBABY METALの「ギミチョコ」などに登場するニュアンスです。
いわれてみれば聞いたことがあるという方も多いと思います。

半音ずつ動くという非常にシンプルな発想なのですが、人間の耳にはこの半音の動きというのが気持ちよく聞こえることが多いです。

もともとはフランス語で「決まった言い回し」「常套句」といったような意味で、その名の通り、数パターンしかないものを暗記すれば分析にも作曲にも使えます。
代表的なのは上にあげた「コードの第五音が上がっていく形」と、もう一つ「第一音が下がっていく形」です。

上がっていく形は各キーにおけるⅠから始まり、下がっていく形は各キーにおけるⅥから始まります。

「赤の同盟」をよく観察してみると、Emからこの下行が始まっていることが分かりますね。
この四つのつながりは、一見複雑な名前のコードが並んでいて、非常に難解な法則が働いているように見えますが、実はEmのEがD#に行き、結果としてコードネームがD# augになる、その次も同じことをして結果としてコードネームがG/Dになる、といったように、コードの第一音を半音ずつ下げていった結果そうなっているに過ぎないのです。
「コード進行」というよりかは単に音の動きをコードネームに表して管理しやすいようにしているといった具合です。

(G/DがU-FRETの仕様で単なるGになっていますが、本来はベース音にDがきて下行がつながっています。)

これが存在する時点でこのサビの始まりはⅥであることが確定なので、キーはGで決まるわけです。

小技② 変終止

クラシックの楽曲は基本的にⅤからⅠの「全終止」と呼ばれる動きで終わることがほとんどなのですが、たまに例外が存在します。

ミサと呼ばれるキリスト教の儀式がありますが、そこにおいて歌われるミサ曲という聖歌は終わりの歌詞が必ず「アーメン」です。
ここは実はⅣ→Ⅰで終わるように作られることが非常に多いです。
理由としては、祈りを終えるのにⅤ→Ⅰという動きはちょっと強烈すぎるから、と勝手に推測します。(根拠はないです)

このⅣ→Ⅰへ行くという動きは「全終止」に対し「変終止」と呼ばれます。
「アーメン終止」という呼び名もあります。
Ⅰへのなだらかな着地を演出する効果があり、段のハッキリしたものを好むクラシックと違って、ポップスではこちらの方がマッチする場面が多かったりもします。
ポップスにおいては曲を終わらせているわけではないので「終止」ではないのですが、「Ⅳ→Ⅰ」の一区切りという意味合いでとらえてください。

そして、このⅣからⅠへ行く動きの途中にⅣのマイナー(Ⅳm)を挟む場合もあります。
Ⅳ→Ⅳm→Ⅰという進行ですね。
こうするとⅣの第三音からⅠの第五音へなめらかな半音のつながりが生まれ、「なだらかな着地」という性格が強まります。

この曲の場合C→Cm→Gという動きがこのⅣ→Ⅳm→Ⅰに当たりますね。
これだけでキーを判定するというのは少し難しいかもしれませんが、キーGという仮説を立てた後であればこの小技は十分キーを確定させる根拠になりうるでしょう。

これもかなり強固な決まり文句なので、先ほど紹介したクリシェの一種ということもできます。

ほぼすべてを小技で説明可能

赤の同盟の分析に話を戻しましょう…と言いたいところですが、見ての通り、かなり複雑に見えるコード進行が、小技二つでほぼ説明可能になっています。

最後にチラっとDm、つまりはⅤmが入っていますが、これは前回も出てきた、「Ⅰ→Ⅳの前に挟むと気持ちいい」という意味合いのあるⅤmです。
この画像には入り切っていないですが、サビの後半のはじめにはⅣであるCが来るので、Ⅰ→Ⅳのつながりの前にⅤmであるDmを挟むといい感じになります。

今回は小技を解説しながら分析をしていきましたが、仮に何の知識もない状態でこのコード進行に向き合ってもダイアトニックコードがなさ過ぎて分析が非常に難しく感じるでしょう。
しかし、「Ⅵからの下行クリシェ」「Ⅳからの変終止」というように、ダイアトニックコードに関連する小技を知ることで、曲の把握が非常に用意になりました。

コードワークのテクニックをダイアトニックコードを基準にして覚えることで、それをもとにして分析がスムーズにいくようになるのです。
今後コード進行の小技をある程度まとめて解説する記事も書こうと考えていますが、「ダイアトニックコードに対してどういった意味合いを持つか」という考え方が常に大事です。
それぞれ単品で覚えても意味がありません。

今回のクリシェの例だったら、ただ単に「マイナーコードのルートを半音ずつ下げていくと気持ちいい」という覚え方では不十分で、「Ⅵのルートを半音ずつ下げていってⅣ#m7 -5まで到達すると気持ちいい」という覚え方をして初めて分析や作曲に役立つという説明が可能です。

コード進行の技に対してこういった覚え方ができるようになると、曲の読みやすさが飛躍的に向上します。

このサビ前半に関する説明をまとめてしまいましょう。

  • Ⅵからの下行クリシェ
  • Ⅳからの変終止、間にⅣmを挟んでおしゃれに
  • 最後Ⅰ→Ⅳの前にⅤmを挟んでおしゃれに

最後にもう一つ注意点です。
このサビはキーGであることが確かですが、実はAメロはキーE♭です。キーというのは曲によって絶対固定のものではなくて、例えば「ここはキーC」「ここはキーEm」などという言い方をします。
さらに高度な話になってくると「キーGだが徐々にキーCに寄せていっている」といったような分析もできたりします。
音楽に向き合う際は頭を柔らかくしていきましょう。

まとめ

「赤の同盟」のサビの前半というほんのわずかな部分を取り扱いましたが、小技をダイアトニックコードと結びついた知識として落とし込むことの重要性が理解できたのではないでしょうか。

この曲に関しては説明できることが非常に多いので、今後一曲通してまとめたコンテンツを作っていきたいと思っています。

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