こんにちは。リュウタロウ先生です。東京芸大休学中の作曲家です。
今回はコラムの前に、まず報告があります。YouTube で、音楽生成 AI と私の「直接対決」をやりました。AI と私がそれぞれ一曲を仕上げ、どちらが「いい曲」かを正面から競う ― AI で作曲を教えている私にとって、いつかは避けて通れない企画です。
対決の形式は、こうです。スタッフがあらかじめ AI で生成した曲の「プロンプトと歌詞」を私が受け取り、同じ素材から、制限時間40分で一曲を仕上げる。判定方法は、作曲家である私の自己ジャッジ ― そして、観てくださるみなさんの耳にもお任せします。
この記事では、対決の結果には触れません。その代わり、動画を観る前に知っておくと面白さが変わる「観戦の軸」を種明かしします。作曲家が他人の曲(AI の曲も含めて)の良し悪しを判じるとき、実際に聴いているのは次の3つです。
軸1:その音が「そこにある理由」を説明できるか。 いい曲は、和音ひとつ、休符ひとつに意図があります。聴き手がその理由まで言語化できる必要はありません。ただ、意図のある音は「必然」として耳に残り、意図のない音は「なんとなく」通り過ぎます。
軸2:定石を外した箇所が、狙いか事故か。 曲は定石どおりに作れば破綻しませんが、退屈します。優れた曲は、どこかで必ず定石を外す。その「外し」が計算なのか、偶然なのか ― ここに作り手の顔が出ます。AI の出力は、この見分けがいちばんスリリングな部分です。
軸3:直しの痕跡。 一発で出た素材と、練り直された曲は、聴けば分かります。展開のつなぎ目、二度目のサビの変化 ― 「編集」の跡は、曲を曲たらしめる労働の跡です。
実際に対決してみての実感も、正直に書いておきます。AI の出力には、唸りました。打ち込みでは絶対に敵わないギターのサウンドが出てくる。しかも、歌が既に入った状態で出てくるのです。ギターを録り、歌い手を立てて初めて届く地点に、最初の出力からいる ― これは正直、脅威です。では、それでも人間の側に残るものは何なのか。その答え合わせは、上の3つの軸を持って、動画で確かめてください。
判定の一部は、みなさんに委ねられています。この3つの軸が、そのまま採点表になるはずです。この対決は「どちらが勝ったか」以上のもの ― 「いい曲とは何か」を巡る実地の講義になります。結果は、ぜひ動画で見届けてください。
今回の文献ワンポイント:コンピュータによる作曲の歴史は意外に古く、1957年、イリノイ大学の Lejaren Hiller と Leonard Isaacson が計算機 ILLIAC I を用いて弦楽四重奏曲《Illiac Suite》を作っています。機械と作曲の「対決と協働」は、実は70年前から続くテーマなのです。
動画はこちらからどうぞ → YouTube「リュウタロウ先生のAI作曲教室」(@ryutarowsensei)
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