こんにちは。リュウタロウ先生です。東京芸大休学中の作曲家です。
AI作曲はダメとかよく聞きますが…一方で、古今東西の音楽を学習して出来上がっているものなので、分析すると意外と作曲の勉強になったりします。
本記事ではAI作曲で作られた楽曲の音楽理論的側面を分析していきます。
近年の J-Pop で多用され、いまや聴き手が"聴き飽きた"とも評される進行があります。通称「丸サ進行」です。flehmen の「汚れた痛み」は、この手垢のついた進行を土台にしながら、なぜ古びて聞こえないのか。本稿では、その延命の仕掛けを分析します。
土台は「丸サ進行」です
本曲のコード進行は Ⅳ→Ⅲm→Ⅲ→Ⅵm→Ⅱm→Ⅴ→Ⅰ です。前半の Ⅳ→Ⅲ(m)→Ⅵm の流れは、いわゆる丸サ進行の骨格です。
【ワンポイント】丸サ進行とは何か
「丸サ進行」とは、椎名林檎「丸の内サディスティック」に由来して呼ばれる和声進行で、Ⅳ→Ⅲ7→Ⅵm を基本形とします(同型の進行は、グローヴァー・ワシントン Jr.「Just the Two of Us」にちなみ "Just the Two of Us 進行" とも呼ばれます)。都会的で洗練された響きをもち、2010年代後半以降の J-Pop・ボーカロイド楽曲で爆発的に普及しました。例えば須田景凪「シャルル」など、この進行の反復を主軸とする楽曲が数多くヒットしており、それゆえ現在では、耳の早い聴き手にとっては"定番すぎる"進行ともなっています。
251進行で「伸ばす」
本曲が、この聴き慣れた進行を古びさせていない理由は、後半にあります。丸サ進行のあとに、Ⅱm→Ⅴ→Ⅰ ― ジャズ・ポップスで最も基本的な終止形である「251進行(ツーファイブワン)」を接続している点です。251進行は、緊張から解決へと自然に着地する、強い帰着感をもちます。丸サ進行だけを反復すれば食傷を招くところを、性質の異なるこの定番を継ぐことで、進行に変化と着地が生まれます。結果として、本曲は手垢のついた響きを回避し、むしろポップで親しみやすい印象へと着地しています。
制作上の意図として
本曲は prompt-jukebox によるスタイル設計と SUNO による生成を経て制作しています。定番進行をそのまま用いるのではなく、別の定番を接ぎ木して食傷を防ぐ ― この「組み合わせの設計」は、流行の構造を理解したうえでの明確な判断です。
結
「汚れた痛み」を聴くときは、前半の聴き慣れた響きが、後半でどう着地するかに耳を向けてみてください。"飽き"を回避する一手が、そこにあります。
いかがだったでしょうか?
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リュウタロウ先生のAI作曲教室 / created by prompt-jukebox

