バンドでキーボードを担当することになったものの「どんなキーボードを選べばいいのかわからない」という方も多いのではないでしょうか。一口にキーボードといっても、さまざまなメーカーや機種があるため、選ぶ際の基準やキーボードの持つ役割などを理解しておく必要があります。
そこで、今回の記事ではバンドで使うキーボードを選ぶ際のポイントやキーボードが魅力的なバンド、初心者の方におすすめの曲などを紹介します。
キーボードとは
キーボードとは、ポップスやロックやジャズといったポピュラー音楽全般で使用する鍵盤楽器を指す言葉です。そのため、大きく分けるとエレクトーンやオルガン、ピアノなどもキーボードに分類されます。
キーボードの特徴は、ピアノの音だけでなく、オルガンや管楽器といったさまざまな楽器の音を奏でることができるということです。また、一般的なアコースティックピアノは88鍵でできていますが、キーボードは32~61鍵と鍵盤数が少ないタイプがあることも特徴です。重量も軽いため、バンドの練習の際にも持ち運びやすいでしょう。
シンセサイザーとキーボードとの違い
シンセサイザーとキーボードの具体的な違いが分からないという方も多いのではないでしょうか。先述のとおり、キーボードとは鍵盤楽器全般のことを指します。つまり、鍵盤がついている楽器であればキーボードと考えても問題ありません。
一方、シンセサイザーという楽器はさまざまな音色を合成する機材のことも指します。日本語で「合成する」という意味の「synthesize(シンセサイズ)」が由来です。鍵盤の有無は関係なく、音を合成するものはシンセサイザーに該当するため、鍵盤のついていないシンセサイザーも存在します。そのため、鍵盤の代わりにツマミやスイッチ、フェーダーなどを操作して音を出すシンセサイザーもあるのです。
ただし、シンセサイザーには鍵盤がついているタイプも多くあります。鍵盤がついていればキーボードの一種でもあるため、基本的にはキーボードとシンセサイザーのどちらの呼び方をしても問題ないといえるでしょう。
バンドでのキーボードの魅力
・キーボード単体でも音楽を作ることが可能
バンド演奏は、ギターやベース、ドラムなどが他の楽器と組み合わさることで成り立ちます。しかし、キーボードはメロディラインとベースラインを同時に演奏することができるため、キーボード単体でも曲が成り立つという点が魅力です。
・多彩な音色を扱うことができる
キーボードの大きな魅力は、ピアノの音色以外にも多彩な音色を作り出すことができることです。キーボードにはさまざまな楽器の音がセットされており、ポップスやロック、ジャズなどのジャンルを超えて演奏することができます。
クラビネットやオルガンなどの鍵盤楽器はもちろん、アコースティックギターやエレキギターなどの弦楽器、トランペットやホルンなどの金管楽器、サックスやフルートなどの木管楽器の音色なども再現することができます。多彩な音色を扱って幅広い音作りを行えるという点は、キーボードの魅力といえるでしょう。
ただし、キーボードで多くの音色を出して使いこなすにはさまざまな楽器の知識を身につける必要があります。各楽器の役割や奏法には特徴があるため、それらを理解したうえで演奏することができれば、より本物の楽器に近い表現ができるようになるでしょう。
・楽曲や音色のアレンジ力が身につく
キーボードは多彩な音色を扱うことができるため、上達すれば楽曲のアレンジ力も身につくという魅力があります。また、鍵盤数を見ることで音のイメージを直感的に把握しやすく、ギターやベースなどの楽器と比較して音楽の基礎を学びやすいともいえるでしょう。
キーボードで音楽の基礎を学ぶことができれば、演奏しながらでも他の楽器との調和を考えたうえで、音楽理論にもとづいたアレンジを加えることができるようになります。
バンドでキーボードが持つ役割
・音の空白をカバーすることができる
バンドでキーボードのパートがあると、音と音の空白をカバーすることができます。ギターやベース、ドラムなどの楽器は、振動が止まると音も消えることがあります。しかし、キーボードは鍵盤を押し続けている限り音が出るため、音が途切れた隙間を埋めることが可能です。
キーボードがバンドに加わると演奏が華やかになりますが、それは音の空白が少なくなるという要素も影響しているといえるでしょう。
・音楽の幅を広げる
キーボードは多彩な音色で演奏することや、幅広い音域をカバーすることが可能です。そのため、キーボードがバンドに入ると他の楽器の代わりを務める、バンドの音楽の幅を広げる、といった役割も果たせます。
例えば、曲にサックスを取り入れたい時に、サックスを演奏できる人をすぐにバンドメンバーに迎え入れることは難しくなることもあるでしょう。そんな時にキーボードの担当がいれば、ギターやベースでは代わりが務まらない楽器もカバーすることができます。
・コード弾きによって演奏に厚みを持たせられる
バンドでキーボードを担当していると「ギターやベース、ドラム以外のパートがない曲を演奏することになって悩んでいる」という方もいるのではないでしょうか。そんな時は、コードを弾くことによってバンドの音に厚みを持たせることができます。
コードとは和音のことです。例えば「ド・ミ・ソ」という3つの音を同時に弾くことでCメジャーのコードになります。ギターとは1オクターブずらしてコードを弾いたり、ギターソロに入った際にキーボードがコード弾きを担当したりすることができれば、バンドに一体感が生まれるでしょう。
コードの詳細は以下の記事で紹介しています。ぜひ参考にしてください。
バンドで使うキーボードの選び方
・鍵盤数
自分に合うキーボードを選ぶには、まず鍵盤数による違いで選ぶことが大切です。ピアノは88鍵のものが一般的ですが、キーボードは49鍵・61鍵・73鍵・76鍵など、さまざまな種類があります。
ピアノに慣れ親しんでいる方は鍵盤数が足りないと感じてしまうかもしれません。しかし、バンドで使用する際に88鍵が必要になる曲を演奏することは少ないかもしれません。ピアノ経験の有無やどんな曲を演奏するのかを考慮して、必要な鍵盤数のキーボードを選びましょう。
・鍵盤のタッチ
キーボードの鍵盤には、ピアノのような重いタッチの鍵盤とエレクトーンのような軽いタッチの鍵盤があります。また、鍵盤数が多くなるほど鍵盤のタッチも重くなる傾向があります。
軽いタッチの鍵盤のキーボードは初心者でも弾きやすく、価格も比較的リーズナブルなモデルが多いため、手に取りやすいでしょう。一方、ピアノ経験者の方は重いタッチの鍵盤が好みかもしれません。鍵盤が重いキーボードは価格が比較的高価でグリッサンド奏法にテクニックを要します。
グリッサンド奏法とは、オルガンの演奏などでよく用いられる、鍵盤を撫でるように連続で弾く奏法のことです。重いタッチの鍵盤でもできますが、滑らかに弾くにはコツがいるため、不安な方は購入時に試し弾きして弾き心地を確認しましょう。
・重量や大きさ
キーボードを選ぶ際には重量や大きさを確認することも大切です。バンドでの練習やライブで演奏する際には、キーボードを持ち運ぶ必要があります。持ち運ぶことを前提としてキーボードを選ぶ場合は、軽いモデルを選ぶのがおすすめです。
一般的に、49鍵や61鍵のキーボードは約5kg程度ですが、88鍵のキーボードは約10~15kg程度になるモデルも少なくありません。鍵盤数や好みのタッチも重要なポイントですが、持ち運べる重量や大きさなのかも確認するようにしましょう。
・プリセット音色の質や豊富さ
キーボード・シンセサイザーには「プリセット」と呼ばれる、メーカーがあらかじめ作り込んだ音色が搭載されています。数百種類ものパターンが搭載されているモデルもあるため、バンドの演奏に必要な音色はほとんど使うことができるでしょう。
どのような曲やジャンルを演奏したいのかを考えて、自分にとって必要な音色が収録されているか事前に確認しておくと、キーボード一台で好きな音楽を演奏しやすくなります。
キーボードが魅力的なおすすめのバンド
・King Gnu
自らの音楽を「トーキョー・ニュー・ミクスチャー・スタイルバンド」と呼ぶKing Gnu(キングヌー)は、個性的な4人が集まったミクスチャーバンドです。ボーカル・キーボードを担当する井口理さんは、東京藝術大学声楽科出身という異色の学歴を持っており、繊細な歌声とピアノのサウンドでバンドの魅力を引き立てています。
・SEKAI NO OWARI
SEKAI NO OWARIはキャッチーな楽曲が魅力的なバンドです。ボーカルであるFukaseさんの透き通るような声とともに、美しいキーボードの音色がファンタジーな世界観を底上げしています。
・Suchmos
神奈川県育ちの6人組人気バンドであるSuchmos(サチモス)は、ジャズやソウル、ロックやヒップホップなど、ジャンルの垣根を超えた心地よいサウンドが魅力です。
Suchmosと似たテイストのバンドで演奏できるようになると、キーボードがお洒落でクールな音楽を作り上げることができます。
キーボードの初心者におすすめの曲
・RADWIMPS「スパークル」
映画「君の名は。」の主題歌であり、幻想的な雰囲気に引き込まれるRADWIMPS「スパークル」は、演奏できるようになりたいという方も多い曲ではないでしょうか。イントロや曲の中間にも出てくる3連符のような伴奏が魅力的であり、耳コピの練習にもなる曲です。
・ヨルシカ「花に亡霊」
「花に亡霊」はボーカルとピアノだけで演奏されているパートもあり、独特な世界観が魅力なヨルシカの代表曲です。初心者でも難しくはないため、ヨルシカが好きな方であればぜひチャレンジしてみてください。
・SEKAI NO OWARI「天使と悪魔」
SEKAI NO OWARIの「天使と悪魔」は、これからキーボードでコードを弾けるようになりたい方におすすめの曲です。特にキーボードが目立つフレーズがあるというわけではありませんが、押さえやすいコードが多いため、初心者の練習にぴったりの曲といえます。
まとめ
今回は、バンドで使うキーボードの選び方やキーボードが活躍しているバンド、初心者におすすめの曲などについてご紹介してきました。キーボードは表現の幅が広いため、上達すればジャンルを問わず演奏することができます。これからキーボードを始めるという方は、今回の記事を参考にしていただき、バンドを楽しんでくださいね。