バスドラムはスティックを使って叩くスネアドラムなどと違い、ペダルを踏んで演奏します。バスドラムを練習していると、なかなか自分の思いどおりに足を動かすことができないことに悩む方も多いのではないでしょうか。この記事ではバスドラムに関する基礎知識や、上手く踏むために知っておきたいコツなどについてお伝えします。
バスドラムとは
バスドラムとは、ドラムセットのなかで最も大きく、ビートやリズムの土台を担当する重要な役割を担っています。スネアドラムやタムタムはスティックで叩きますが、バスドラムは専用のキックペダルを踏んで叩くという点が特徴です。このことから、バスドラムは「キック」とも呼ばれています。
バスドラムのサイズはインチで表記され、口径が18~26インチ(約45〜66cm程度)、胴の深さが14~18インチ(約35〜45cm程度)までさまざまな大きさのものがあり、サイズ感は音の響きに関係します。そのため、口径や胴の深さに比例して、より大きく深い音を出すことが可能です。
また、ドラムセットによってバスドラムをセットしている数が異なる場合があります。バスドラムがひとつセットされている場合は「ワンバス」、ふたつセットされている場合は「ツーバス」と呼ばれ、キックペダルを両足で操作することによって演奏することが可能です。
なお、バスドラムをふたつ用意しなくても、ワンバスをツーバスのように演奏できる「ツインペダル」というアイテムもあります。
バスドラムに使われる主な材質
・ウッド(木材)
現在発売されているバスドラムは、ウッド製のものが主流となっています。ただし、使用される木材の材質にもさまざまな種類があるため、それぞれの特性を把握しておきましょう。
例えば、最もポピュラーな木材であるメイプルは、明るく抜けの良い音で、幅広いジャンルに対応することができます。また、バーチが使われているバスドラムは、中低音のサスティーン(音の伸び)が短く、アタック音が強調される点が特徴です。
他にもウォルナットやマホガニー、オークなどの木材が使用されたバスドラムが販売されており、加工の方法によっても音の特性は変化します。自分の好みに合ったものを探してみてください。
・アクリル
アクリル製のバスドラムは近年、多くのメーカーが使用しており、さまざまなメーカーのものから選べます。音色は天然の材質とは違った無機質なサウンドであること、また、短いサスティーンと強めのアタック音が特徴となっており、主にメタルやハードロックなどのジャンルで好まれる傾向にあります。
また、アクリルのクリアなデザインも魅力的です。ウッド製のバスドラムと違い、天候などの影響も受けにくいため、安定したパフォーマンスを発揮することができます。
・メタル(金属)
メタル素材のバスドラムは現在では一部のメーカーでしか販売されていませんが、スチールなど金属製のバスドラムもあります。ウッド製やアクリル製よりもアタック音が強く、豊かなサウンドが特徴ですが、重量が重いため持ち運ばずにライブハウスやスタジオ用に置いてもらって使うのがおすすめです。また、他の材質に比べてチューニングが難しい傾向にあるため、はじめはレッスンの講師や経験者に見てもらいながらチューニングを行うと良いでしょう。
バスドラムのパーツの名称
・フロントヘッド
フロントヘッドは、バスドラムの打面とは反対側にあるヘッドのことを指します。「レゾナンスヘッド」とも呼ばれ、メーカーのロゴなどが大きく印字されていることが多いため、ドラムセットの印象を左右するパーツです。
また、フロントヘッドはサスティーンのチューニングをするパーツのひとつです。スタンダードな厚さである「アンバサダー」のフロントヘッドがよく使用されています。
・フロントフープ
フロントフープは、バスドラムのフロントヘッド部分を囲んでいるパーツです。タムのフープ(リム)と同じ機能を果たすパーツで、ヘッドをシェルに固定する役割があります。しかし、バスドラムのフロントフープは、素材が金属製ではなく、木材で作られていることが多くあります。これにより、バスドラム独特の低くて深いサウンドを保ちつつ、耐久性や安定性の向上にもつながるのです。
さらに、バスドラムのフロントフープには専用の形状があります。そのため、ドラムセットを組み立てる際には、フロントフープの向きを誤ってセットすることがあるため注意しましょう。なお、フロントフープの正しい向きは、ヘッドと接触する面が斜めにカットされているという点によって判断できます。
・ポートホール
フロントヘッドに開けられている穴をポートホールと言います。ポートホールは空気が抜けることを目的として作られており、バスドラムの音質を調整するという重要な役割を担っているパーツです。
ポートホールが大きく、中心に近い位置にあるほどアタック音が際立ちます。一方、ポートホールが小さく、中心から離れた位置にあると、サスティーンが伸びるようになります。この違いを把握し、実際の音を比較しながらバスドラムを選ぶのもおすすめです。
なお、ポートホールは必ず開いているというわけではありません。ジャズなどの一部のジャンルでは、ポートホールを開けずに使用するドラマーもいます。
・タムホルダーベース
タムホルダーベースは「タムマウントブラケット」とも呼ばれる、バスドラムにタムホルダーを連結させるためのパーツです。このパーツがあることで、タムタムをバスドラムの上にセッティングすることが可能となります。
なお、タムホルダーベースの長さやパイプの直径は、メーカーやモデルによって異なる場合があります。そのため、タムホルダーベースを購入する際は、ドラムセットに合ったサイズになっているか事前に確認しておきましょう。
・スパー
スパーとはバスドラムを床に設置するためのパーツで、蹴爪や尾根とも呼ばれています。スパーは演奏中にバスドラムが動いてしまうことを防ぐ役割も担っており、手のひらが入る程度の隙間を空けて設置することが一般的です。また、バスドラムのフロント側を地面から浮かせることによって、音の抜けを良くするという効果もあります。
・バターヘッド
バターヘッドとは、打面側のヘッドを指します。多くのバターヘッドの外周には、2枚のフィルムが重ねられた「ピンストライプ」タイプのヘッドが使用されています。
バスドラムはキックペダルを踏み、ビーターで叩くことによって演奏しますが、ビーターの接触部分は摩耗しやすいため「インパクトパッド」を貼ることによってヘッドを保護することが可能です。さらに、インパクトパッドを貼ることでアタック音を強調するという役割も担っています。
・バックフープ
バスドラムのリム部分をバックフープといいます。バックフープは、キックペダルをしっかりと固定するために、ゴムや金属製のプレートが取り付けられているモデルが多くなっています。この部分にキックペダルを固定しなかったり、フロント側に固定してしまったりすると取り付けを直すのが大変に感じることも。そのため、取り付け作業は慎重に行いましょう。
・エアホール
エアホールは「ベントホール」とも呼ばれる、バスドラムのシェルに開けられた穴のことです。エアホールはバスドラム内部の空気を逃すために作られており、これによって音がクリアに抜けるようになります。
エアホールがないと音がこもってしまうため、多くのバスドラムにはエアホールが開けられています。ただし、エアホールの数や大きさなどはメーカーやモデルによって異なるため、事前にホールの大きさも確認するようにしましょう。
・バスドラムフック
バスドラムフックとは、かぎ爪のような形状でフープを固定するためのパーツです。その形状から「クロー」とも呼ばれています。なお、バスドラムフックのサイズや形状はメーカーやモデルによって異なる場合があるため注意が必要です。追加購入や交換の必要がある場合は、自分のドラムセットに適した形状かどうかを確認するようにしましょう。
・ラグ
バスドラムのシェルについており、テンションボルトを受けるためのパーツをラグといいます。ラグはヘッドのテンションを調整する役割を担っていますが、時間経過によって傷んでしまうパーツでもあります。ラグが傷んでしまうとチューニングが不安定になってしまうため、1年に1回程度のメンテナンスが必要です。
・シェル
シェルとは、バスドラムの胴の部分を指す、サウンドに大きな影響を与える重要なパーツです。先述のとおり、バスドラムの材質にはさまざまな種類があり、シェルに用いられる材質によって音質が異なります。また、ウッド製のものが多いですが、ウッドは天候による音質への影響を視野に入れて手入れを行いましょう。
バスドラムを踏む前のチェックポイント
・スローンには浅く座る
ドラマーは、一度演奏が始まると座り直すことが難しいため、初心者のうちから正しい座り方を身につけることが重要です。
まず、スローンに深く腰掛けず、前半分の位置に浅く座るようにしましょう。仮に深く座ってしまった場合、太ももがスローンに引っかかることで足の動きに制限がかかってしまいます。また、浅く座ることで足に力も入れやすいため、ペダルを力強く踏むことが可能です。
慣れるまでは違和感があるかもしれませんが、スローンの座り方は演奏に大きな影響を及ぼすため、必ず覚えておきましょう。
・バスドラムペダルに足を乗せる位置
バスドラムペダルに足を乗せる位置も演奏に大きな影響を与えるため、初心者のうちに正しい位置を覚えておく必要があります。足はプレートの先端から、2~3cmほど下の位置に置くようにしましょう。そうすることで、パワーを効率良くビーターに伝えることが可能です。
プレートの先端ギリギリの位置に足を置いてしまうと、チェーンやベルトが邪魔で、踏み込んだ時に力をしっかりと伝えることができません。また、ハイハットペダルを踏む深さとバラバラになってしまうと、全体的なバランスも悪くなってしまうため注意しましょう。
バスドラムの踏み方
・かかとを少し上げる
バスドラムの踏み方は、大きく分けて2種類あります。かかとを上げて踏む「ヒールアップ奏法」と、かかとをつけた状態で踏む「ヒールダウン奏法」の2つです。多くのジャンルではヒールアップ奏法が使われるため、まずはかかとを上げた状態での踏み方をマスターしていきましょう。
まず、ペダルに足を置いた時に、軽くかかとを上げてセットポジションを作ります。この時、少し前かがみになることで足にしっかりと体重をかけることが重要です。特に、バンドで演奏する場合に踏み込む力が弱いと、エレキギターやボーカルの音量に負けてしまいます。大きな音を出してバスドラムの存在感を出すためにも、ヒールアップ奏法を身につけることが重要です。
・しっかり膝から足を上げる
バスドラムを踏む際は、足の上げ方も重要です。太ももを使って踏まず、ふくらはぎやスネ辺りの筋肉を使うことを意識して、膝から足を上げるようにしましょう。
太ももから足を上げてしまうと、余計な体力を使うため長時間の演奏が難しく感じます。また、ペダルを踏む際に上半身がグラグラ揺れてしまうとストロークが安定しなくなるため、下半身だけでなく上半身もぶれないように演奏することも意識しましょう。
・ペダルのスプリングの動きに合わせて踏む
バスドラムは、ペダルのスプリングの力も利用して踏み込むことによって、よりパワフルな音を出すことが可能になります。以下の手順で踏むことを意識して練習しましょう。
- かかとを軽く上げ、セットポジションを作る
- ペダルを軽く踏むと、その反動でビーターが手前に返ってくる
- スプリングの力によって、ビーターが打面に戻るタイミングで踏み込む
このように、自分の踏み込む力だけでなく、スプリングの動きも利用してペダルを踏むことが重要なポイントです。「バスドラムの音が弱い」と悩んでいる方は、この踏み方を実践してみてください。
バスドラムが上手く踏めない場合の注意点
・ペダルのスプリングが強すぎる
先述で記載したとおり、バスドラムでしっかり音を出すためにはスプリングの力も利用することが大切です。スプリングが強すぎるとパワーは増しますが、踏み込みのタイミングもシビアになってしまいます。そのため、初心者の方はスプリングを緩くしてから、ビーターが動くスピードを遅くしてから練習する方法もおすすめです。
・足首のスナップを効かせて踏み込む
ヒールアップ奏法で演奏する時は、足首の動きを意識することによって、より大きく深い音を出すことが可能です。ペダルを踏みこむ瞬間、最後に少しだけ足首で押し込むような意識をしてみましょう。ほんの少しの違いでも、音の違いを感じ取れるはずです。
ただし、足首のスナップを意識しすぎると、足全体の踏み込みが甘くなってしまう場合があります。慣れるまでは難しく感じるかもしれませんが、少しずつ練習していきましょう。
バスドラムのチューニング方法
バスドラムのチューニングを行う際はミュートする必要がありますが、他のドラムとは方法が異なります。
例えばスネアドラムの場合、打面にミュート材などを貼ってチューニングを行うのが一般的です。一方、バスドラムの場合は、中に毛布などの吸音材を入れてミュートを行います。ミュートをすることでアタック音が強調されるため、バスドラムの音質をはっきり聴き取ることが可能です。
ミュートができたら、チューニングキーを使って各ボルトのテンションが均等になるように少しずつ調整していきます。この時、ひとつのボルトを調整したら、次は対角線上にあるボルトを調整します。音の出方を細かくチェックしながら、好みの音質に調整していきましょう。
自宅でも実践できるバスドラムの練習方法
最後に、自宅でバスドラムのペダルを使わずに練習できる方法を紹介します。練習の手順は以下のとおりです。
- 椅子に座り、足の裏全体を床につける
- つま先を床につけたまま、かかとを上げてリズムを取る
- ②ができたら、かかとが床に着いたタイミングでつま先を一瞬上げる
かかとを上げる際は、常につま先に重心があることを意識することが重要です。最初のうちは難しく感じるかもしれませんが、練習を重ねれば実際にペダルを踏んだ時にも同じように足を動かせるようになります。足をスムーズに動かせるようになるために、日々練習を重ねましょう。
まとめ
今回の記事は、バスドラムに関する基礎知識や踏み方やチューニング方法などについて解説しました。バスドラムは、踏み方のポイントを意識するだけで音質が大きく変わる楽器です。そのため、早く上達するには基本的な踏み方をマスターすることが重要になります。
今回の記事を参考にして、バスドラムから迫力のある音を出せるよう練習していきましょう。