ギターを始めたばかりの方の中には、コードやその理論が難しいと感じる方も多いのではないでしょうか。この記事ではギターのコードを覚えたい方に向けて、初心者が覚えるべき簡単なギターコードや弾き方などを解説していきます。
ギターコードとは
コードとは、日本語で「和音」という意味であり、高さの異なる複数の音を同時に鳴らすことによって生まれる美しい音色のことです。コードにはそれぞれ名前があり、どの音を組み合わせるのかによってコード名が変わります。
例えば、Cコードは「C」「E」「G」という3つの音(ド・ミ・ソ)によって構成されていますが、当然ながら「ド」の音だけを弾いてもコードにはなりません。そこで、同時に「ミ」と「ソ」も鳴らすことによって、3つの音が調和した美しい響きが生まれるのです。
また、これからギターを始める方のなかには「なぜ音階がアルファベット表記なのか?」と疑問に思う方もいるかもしれません。音階といえば「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ」ですが、実はこの読み方はイタリア語であり、ギターでは英語の表記である「C・D・E・F・G・A・B」となるのです。そのため、例にあげたCコードとは「ドの和音」という意味になることも覚えておきましょう。
ギターコードの基本的な理論
コードを構成する要素
基本的に、ギターのコードはベースとなる「ルート(根音)」、ルートから数えて3番目にあたる「3度」、ルートから数えて5番目にあたる「5度」と呼ばれる3つの音によって構成されています。
例えば、Cコードのルートは「ド」で、3度は「ミ」、5度は「ソ」です。ド・ミ・ソと低い音から順番になったものを基本形といい、ソ・ド・ミやミ・ソ・ドなどの順番を入れ替えたものを転回形といいます。
このように音の順番が変わったり、オクターブ違いの音を重ねたりしたとしても、コード名は「C」のままとなります。初心者の方は「なぜ、同じCコードなのに複数のフォームが存在するのか?」という疑問を抱くかもしれませんが、それはコードを構成する音が同じだからです。つまり、フォームや鳴らす弦の数が違ったとしても、ド・ミ・ソという音の組み合わせだけで構成されていればCコードとなります。
なお、当然ながらフォームが違ったとしても、同じコードであれば似た響きになります。二人のギタリストが一緒に演奏している際に「こちらのCは明るくてポジティブな響きなのに、こちらのCは暗くてどんよりした響きに聴こえる」ということはないでしょう。だからこそ、それぞれのギタリストが別々のフォームでコードを押さえていたとしても問題はないというわけです。
メジャーコードとマイナーコードの違い
ギターのコードは、メジャーコードとマイナーコードの2種類に分類されます。それぞれが違う印象の響きを持っていて、この違いを理解しておくとギターの演奏や作曲をする際にも役立つため、ぜひ覚えておきましょう。
まず、メジャーコードは明るく綺麗に調和した響きを持つことが特徴です。ポジティブで希望にあふれた曲調の楽曲は、メジャーコードを中心とした構成になっていることが多いといえるでしょう。一方、マイナーコードは悲しさや哀愁を感じさせる、暗い雰囲気の響きを持っています。音色に独特の渋さや重さが感じられるため、ロックの名曲などでも多く使用されているコードです。
メジャーコードとマイナーコードには以上のような違いがありますが、実はコード進行によってはメジャーコードが悲しさや怪しさを感じさせる響きになったり、マイナーコードが希望を感じさせるような響きになったりすることがあります。
つまり、コードの持つ印象はメジャーコードとマイナーコードの違いによるものだけでなく、「どのようなコード進行で使われるのか」によっても変わるのです。このように、コードは単体の印象だけでなく、コード進行によっても印象が変わる奥深いものだといえるでしょう。
初心者が覚えるべき簡単なギターコード
Cメジャー(C)
最初に紹介するのは、Cメジャーコードです。Cコードは「C」「E」「G」の3つの音(ド・ミ・ソ)で成り立ち、押さえ方は以下のとおりとなっています。
- 2弦:人差し指で押さえる(1フレット)
- 4弦:中指で押さえる(2フレット)
- 5弦:薬指で押さえる(3フレット)
※1弦・3弦は押さえず、開放弦を弾く
Cメジャーコードを弾く際は、弦を押さえている左手の指をしっかりと立てるようにしましょう。指をしっかり立てて押さえなければ、隣の弦に触れてしまうことで音が鳴らなくなってしまいます。また、コードを押さえることに慣れてきたら、6弦が鳴らないように親指を使ってミュートすることにもトライしてみてください。
Dメジャー(D)
Dコードは「D」「F#」「A」の3つの音(レ・ファ#・ラ)から成り立っており、Dメジャーコードの押さえ方は以下のとおりとなっています。
- 1弦:中指で押さえる(2フレット)
- 2弦:薬指で押さえる(3フレット)
- 3弦:人差し指で押さえる(2フレット)
※4弦は押さえず、開放弦を弾く
また、5弦と6弦はコードを押さえている左手の親指を使い、軽くふれておくことでミュートしておきましょう。
Dマイナー(Dm)
Dマイナーコードは「D」「F」「A」の3つの音(レ・ファ・ラ)によって成り立ち、コードの押さえ方は以下のとおりとなっています。
- 1弦:人差し指で押さえる(1フレット)
- 2弦:薬指で押さえる(3フレット)
- 3弦:中指で押さえる(2フレット)
※4弦は押さえず、開放弦を弾く
2弦は薬指で押さえますが、薬指が難しければ小指で押さえても構いません。また、Dマイナーコードを弾く際には、5弦と6弦が鳴らないように左手の親指でミュートするようにしましょう。
Eメジャー(E)
Eメジャーコードは「E」「G#」「B」の3つの音(ミ・ソ#・シ)から成り立っており、押さえ方は以下のとおりです。
- 3弦:人差し指で押さえる(1フレット)
- 4弦:薬指で押さえる(2フレット)
- 5弦:中指で押さえる(2フレット)
※1弦・2弦・6弦は押さえず、開放弦を弾く
開放弦が多いため、初心者にとっては指の配置が楽です。そのため、Eメジャーコードは初心者の練習に適したコードのひとつといえるでしょう。ただし、親指が6弦に触れてしまうことで音が出ないという方もいるため注意が必要です。
Eマイナー(Em)
Eマイナーコードは「E」「G」「B」(ミ・ソ・シ)の3つの音から成り立ち、コードの押さえ方は以下のとおりとなっています。
- 4弦:薬指で押さえる(2フレット)
- 5弦:中指で押さえる(2フレット)
※1弦・2弦・3弦・6弦は押さえず、開放弦を弾く
Eメジャーコードと同様に、Eマイナーコードも開放弦が多いため、初心者にとっては非常に弾きやすいコードとなっています。ただし、中指と薬指はしっかりと立てて、隣の弦に指が触れないようにしましょう。
Gメジャー(G)
Gメジャーコードは「G」「B」「D」の3つの音(ソ・シ・レ)から成り立っており、押さえ方は以下のとおりです。
- 1弦:小指で押さえる(3フレット)
- 5弦:中指で押さえる(2フレット)
- 6弦:薬指で押さえる(3フレット)
※2弦・3弦・4弦は押さえず、開放弦を弾く
小指に力が入っていない場合は、1弦の音がしっかり鳴らない場合があるかもしれません。また、初心者の方は薬指を上手く立てることができず、5弦に薬指が当たってしまうことで音が鳴らなくなってしまうケースもあります。しっかりと音が鳴るように、指を立てる練習も行っていきましょう。
Aメジャー(A)
Aメジャーコードは「A」「C#」「E」の3つの音(ラ・ド#・ミ)で構成され、押さえ方は以下のとおりとなっています。
- 2弦:薬指で押さえる(2フレット)
- 3弦:中指で押さえる(2フレット)
- 4弦:人差し指で押さえる(2フレット)
※1弦・5弦は押さえず、開放弦を弾く
ただし、ディストーションやオーバードライブなどによって、あえて歪んだ音を作り出す場合には、人差し指だけで2弦・3弦・4弦を押さえるフォームもよく使われます。初心者でも簡単に弾けるコードであり、多くの楽曲で使われているため覚えておきましょう。
Aマイナー(Am)
Aマイナーコードは「A」「C」「E」の3つの音(ラ・ド・ミ)から成り立ち、押さえ方は以下のとおりとなっています。
- 2弦:人差し指で押さえる(1フレット)
- 3弦:薬指で押さえる(2フレット)
- 4弦:中指で押さえる(2フレット)
※1弦・5弦は押さえず、開放弦を弾く
Aマイナーコードでは6弦を鳴らさないため、親指で軽くふれることでミュートしておきます。ただし、6弦の開放弦の音はAマイナーコードの構成音に含まれているため、まだミュートがうまくできない場合には鳴らしてしまっても問題ありません。
また、AメジャーコードとAマイナーコードは、2弦が1フレット違うだけということも覚えておきましょう。
各コードから始まる代表的な曲
Cメジャー(C)
Cメジャーコードから始まる代表的な曲としてご紹介するのは「スピッツ/チェリー」です。この曲は「カノン進行」という王道のコード進行をそのまま使用しているのですが、カノン進行は世界中のポップスで多く使われています。例えば、「福山雅治/桜坂」や「あいみょん/マリーゴールド」、「THE BEATLES/ Let It Be」などもカノン進行を使用した楽曲です。
シンプルながらも完成度が高く、日本でも広く受け入れられている鉄板のメロディーといえるでしょう。コードチェンジが少し多いため最初は苦戦するかもしれませんが、ぜひ練習してみてください。
また、「海外の女性シンガーが歌う曲にも挑戦したい」という方には「テイラー・スウィフト/ We Are Never Ever Getting Back Together」がおすすめです。この曲は、初心者向けの簡単なコード譜であれば「C・G・D・Em」の4つのコードで弾くことができます。まずは初心者向けのコードで練習を重ね、ある程度ギターに慣れてきたら原曲のコードにもチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
Dメジャー(D)
続いてご紹介する曲は「MR.Big/ To Be With You」です。カポタスト(フレットに挟むことでキーを変更できるアイテム)は必要になってしまいますが、曲の大半がD・G・Aの3つのコードで構成されているため、初心者にもおすすめの曲となっています。
たまにBmが出てきますが、Dに置き換えてもあまり違和感がないので、難しい場合はDに変えて練習してみてください。
Dマイナー(Dm)
Dマイナーコードを用いた有名な曲には「中島みゆき/地上の星」があります。マイナーコードは基本的に暗く曇ったような響きを持っていますが、その特性を活かして神秘的でドラマチックな曲調に仕上げている点が魅力的です。Dマイナーコードは押さえ方こそ難しくありませんが、5弦・6弦をミュートにすることが重要なので注意しましょう。
Eメジャー(E)
Eメジャーコードから始まる曲には「AC/DC/Back In Black」があります。約40年前の曲ですが、この曲のリフは一度聴いたら耳から離れないくらいキャッチーです。多くの方が、ギターを始めたなら一度は弾いてみたい曲なのではないでしょうか。E・D・Aというコード進行になりますが、E以外のコードは入りが裏拍からとなることに注意しましょう。
Eマイナー(Em)
Eマイナーコードから始まる曲として「米津玄師/ Lemon」があります。出てくるコードの種類は少し多いですが、コードチェンジの腕を試す良い練習にもなるため、ギターにある程度慣れてきたら挑戦したい曲です。また、この曲はコードの押さえ方だけでなく、ストロークにもこだわるとかなりかっこよく弾けるため、リズム感も意識していきましょう。
そのほかに、Eマイナーコードから始まる曲には「浜田省吾/MONEY」もあります。
“BIG MONEY”を掴みたいと夢見る若者の姿を描いた、浜田省吾を代表する名曲です。この曲も出てくるコードの種類は少し多くなりますが、初心者向けの簡単なコード譜もあるため、好きな方はぜひ練習してみてください。
Gメジャー(G)
Gメジャーコードから始まる代表的な曲としてご紹介するのは「Ben E. King/STAND BY ME」です。誰もが知っている名曲ですが、この曲はG・Em・C・Dの4つのコードのみで弾けてしまいます。シンプルなコード進行にも関わらず、弾いていて楽しいおすすめの曲です。
Aメジャー(A)
「AC/DC/Highway to Hell」は、AメジャーコードからAメロが始まります。こちらは先程ご紹介した「AC/DC/Back In Black」と同じアルバムに収録されている楽曲ですが、時が経過しても色褪せない名曲といえるでしょう。重厚なリフや地獄というキーワードから少々暗いイメージが先行してしまうかもしれませんが、アップテンポでユーモアに溢れた歌詞が魅力的です。コードはA・D・Eを中心となっており、ロック好きの方はトライしてみたい曲ではないでしょうか。
また、Aメジャーコードから始まる曲として「藤井フミヤ/ TRUE LOVE」もおすすめです。先述で紹介した「スピッツ/チェリー」と並び、コードが簡単な曲としてよく取り上げられる曲となっています。TRUE LOVE は1993年にリリースされた曲ですが、いまだに色褪せない名曲といえるでしょう。
Aマイナー(Am)
Aマイナーコードから始まる曲として最後にご紹介するのは「Led Zeppelin/Stairway to Heaven」です。日本語で天国への階段という意味を持つこの曲は、マイナーコードによって独特の哀愁を表現しています。曲の長さは約8分にもわたり、クライマックスに向けて徐々に盛り上がる大作です。Am→E7→C→Dというコード進行になっており、ギターを始めた方がコピーする定番の曲となっています。
各コードの弾き方と練習方法
コードを綺麗に弾けるようになるには、それぞれの弦をきちんと押さえられるように訓練することが重要です。指をしっかり立てて弦を押さえなければ、他の弦に指が触れて音が鳴らなくなってしまいます。また、ミュートにしなければならない弦も、同時に押さえられているか確認しましょう。
しっかりと弦を押さえられるようになったら、コードを実際に弾いてみましょう。最初に練習するコードとしては、CやAmのような押さえる弦が比較的少ないコードがおすすめです。この時、すべての弦がしっかりと鳴っているか、1本ずつ丁寧に確認しながら進めていきます。1弦から6弦までを弾き終わったときに、すべての音が調和した響きになっていれば、正しく押さえられているという証拠です。最初は根気のいる作業かもしれませんが、正しい押さえ方を体に馴染ませるために必ずやっておきましょう。
ある程度コードが押さえられるようになったら、簡単なコード弾きにチャレンジしてみてください。例えば「C→D→Em→G」などを使って、コードチェンジを行っていきます。まずは右手のストロークが止まらない程度のスピードで問題ないので、何度も行って自分の身体に馴染ませていきましょう。
ギターコードを押さえる際のコツ
ギターコードを押さえるコツはいくつかあります。まずは、何度も述べているとおり「指をしっかり立てて弦を押さえること」です。指の第一関節を曲げ、指先で弦を押さえることを意識しましょう。
また、弦を押さえる際にはフレットの真ん中ではなく、できる限りフレットに近い部分を押さえることがクリアな音を出すためのコツです。ただし、コードによっては指が届かない場合もあるため、意識しすぎる必要はありません。余裕が出てきたら気をつける程度で問題ないため、知識として覚えておきましょう。
ギターの簡単なコード進行の例
I-IV-V(1-4-5)コード進行
I-IV-V(1-4-5)コード進行は、数多くあるコード進行のなかでも最もポピュラーなコード進行のひとつです。例えば、Cメジャースケールを用いた場合、C(I)から始まり、F(IV)、そしてG(V)というコードを順番に弾いていきます。数多くのコード進行がここから派生しているため、基礎知識として覚えておきましょう。
II-V-I(2-5-1)コード進行
次にご紹介するコード進行は、II-V-I(2-5-1)コード進行というものです。先程のようにCメジャースケールで考えると、II-V-I進行は、Dm(II)から始まり、G(V)、そしてC(I)という順番でコードを弾い
ていきます。ひとつのフレーズやセクションの終わりをきれいにまとめる終止形コードという役割や、楽曲の一時的な転調を担うコード進行としても使われています。
まとめ
今回ご紹介したコードはさまざまな楽曲で使用されているため、スムーズに押さえられるようになれば多くの名曲を弾けるようになります。ただし、コードを練習して指や手首が痛くなってきた場合は、無理なく休憩を入れることも大切です。本記事で紹介した簡単なギターコードと弾き方のコツを参考にしていただき、自分のペースで楽しみながら練習してみてください。