ベースは、ドラムとともにバンドのリズムを支える重要なパートであり、サウンドの要ともいえる楽器です。ベースに地味な印象を持っている方が多いかもしれませんが、近年はベーシストが注目を浴びる機会も増え、ベースの人気は高まっています。
そこで、本記事ではベース初心者が覚えておきたい知識やバンドでの役割や弾き方、練習方法などの基本知識をわかりやすく解説していきます。
ベースとは
ベースとは本来の意味でいうと楽曲の低音部分を支える楽器やパートのことを指します。そのため、一口にベースといってもさまざまな種類のベース楽器が存在します。また、ベースは数ある弦楽器のなかでも弦が太いのが特徴です。演奏時はコード(和音)を弾くより、単音弾きで低音を奏でることが多い楽器となっています。
ベースは裏方に徹する楽器に見えるかもしれませんが、楽曲のリズムやグルーヴ感を作り出すパートであるため、バンドにおいて非常に重要なポジションだといえるでしょう。
エレキベースが普及した背景
ベースと聞くと、「エレキベース」を想像する方も多いのではないでしょうか。実は、エレキベースが誕生する前は、現在もクラシックなどで用いられている「コントラバス」が主なベース楽器でした。
しかし、コントラバスは本体が大きく取り回しが大変に感じやすいことにくわえて、アンプにつなぐことによって大音量で音を鳴らすこともできません。また、コントラバスはスケールが長く、音程を確認するためのフレットもなかったことから、演奏には非常に高いスキルが必要でした。
そこで1951年に、Fender社の創設者であるレオ・フェンダー氏によって、世界初のエレキベースである「プレシジョンベース」が作られました。エレキベースはアンプで音を増幅することができるため、大きなステージでもベースの音が埋もれることはありません。また、ボディサイズもコンパクトで、ギターのようにフレットも打ち込まれているため、誰でも気軽にベースを演奏できるようになりました。
現在では多くのメーカーからさまざまな種類のベースが発売されており、対応可能な音域や音質の好みなどによって、自分に合うものを選べるようになっています。
バンドにおけるベースの役割
ベースはバンドにおいて、低音(ボトム)を演奏する役割があります。ベースはギターには出せない音域を担当し、ベースがいることで演奏全体にまとまりを持たせることが可能です。特にライブでは、ベースの低音が響くことで迫力ある演奏になります。
また、ベースはリズムを担当し、バンドの土台を支える役割も担っています。ベースはドラムとともに楽曲のリズムを支えるのですが、土台となるリズムが不安定になってしまうと演奏全体のクオリティも下がってしまいます。そのため、ベースはバンド全体の実力を左右する重要なパートだといえるでしょう。
ベースの基本的な種類
・エレキベース
一般的に、バンドで使うベースはエレキベースのことを指します。エレキベースにはピックアップというパーツが搭載されており、弦の振動を拾って電気信号に変換します。そして、変換した電気信号をアンプに送ることで、音を増幅させるという仕組みです。
なお、エレキベースはアンプにつないで弾くことを前提としているため、そのまま弾くと小さな音しか出すことができません。プレシジョンベースやジャズベースなど、さまざまな音楽ジャンルに合わせて演奏できるベースも展開されています。自分の好みや演奏する曲に合うベースを選びましょう。
・アコースティックベース
アコースティックベースとは、ボディに空洞があることで、アンプにつながなくてもしっかりとした音量を出せるのが特徴のベースです。アコースティックギターのベース版とイメージすると分かりやすいでしょう。アコースティックベース独特のあたたかいサウンドが特徴であり、ジャズやカントリーなどのジャンルで使われることがあります。
また、アコースティックベースは生音での演奏も可能ですが、バンドで演奏する場合は音量が物足りない場合があります。その時は「ピエゾピックアップ」というパーツを取り付けると、アンプにつなげることも可能です。
・ウッドベース
ウッドベースとは、ジャズやオーケストラで使用される「コントラバス」の別名です。先述のとおり、エレキベースが誕生するまではウッドベース(コントラバス)が主流でした。
ウッドベースは地面に立てかけて演奏し、サイズが非常に大きいことが特徴です。大きなボディによって生み出される低音には迫力と温かみがありますが、エレキベースとは全く異なる演奏技術が必要な楽器となっています。
・エレクトリックアップライトベース
エレクトリックアップライトベースとは、ウッドベースのボディをコンパクトにし、ピックアップを搭載することで音を増幅できる仕様になったベースです。ウッドベースと同じように地面に立てて演奏します。また、音色もウッドベースに似ています。
ウッドベースはサイズが大きく、重量も重いため持ち運びが困難です。しかし、エレクトリックアップライトベースであればコンパクトなため、自宅やスタジオでの練習にも向いているという魅力があります。
ベースの基本的な弾き方
・フィンガー奏法
指で弾いてベースの音を鳴らす奏法をフィンガー奏法といいます。人差し指と中指を使う「ツーフィンガー奏法」と、薬指も使う「スリーフィンガー奏法」がありますが、ベース初心者の方はツーフィンガー奏法から練習するのが基本です。
まず、ツーフィンガー奏法は親指をピックアップの上に乗せることで動かないようにしておきます。そして、人差し指と中指を交互に使って弾いていきましょう。ツーフィンガー奏法は指を使って弾くため、やわらかいサウンドを出すことができ、幅広いジャンルに対応できる点が魅力です。
・ピック奏法
ピック奏法とは、指ではなくピックを使って弦を弾く奏法のことです。ベース初心者の方にもおすすめの弾き方で、アタック感の強いサウンドを出すことができます。
ただし、ピック奏法ではピックを弦に当てる角度が重要です。角度がずれると良い音が出ないため、弦と並行に当てることを意識して練習してみてください。
・スラップ奏法
スラップ奏法とは、弦を叩いたり引っ張ったりすることで音を鳴らす奏法のことです。チョッパー奏法とも呼ばれるこの弾き方に憧れて、ベーシストを目指したという方も多いのではないでしょうか。
スラップ奏法では、指で弦を叩いて鳴らす「サムピング」や、弦を引っ張って鳴らす「プラッキング」を繰り返して演奏します。独特なグルーヴ感を作り出すことができるため、非常に魅力的な演奏方法といえるでしょう。
ベース初心者がやるべき基本的な練習方法
・一音ずつ順番に弾く「クロマチック」
クロマチックとは、一音ずつ順番に音を出していくことで、指を動かす感覚を身につけるための練習方法です。ベースを始めたばかりの頃は、なかなか自分の思うように指を動かすことができませんが、クロマチックを繰り返し行うことで指の動きを覚える練習になります。
クロマチックの具体的な練習方法は以下のとおりです。
- 4弦の1フレットに指を置き、1~4フレットまで順番に弾く
- 3~1弦まで同じように弾く
- 1弦まで終えたら、次は1弦の4~1フレットまで逆の順番で弾く
- 2~4弦も同じ手順で弾く
クロマチックは反復練習になるため、雑に弾かないよう注意してください。一音ずつ、正確に音が出ているかを確認しながら、丁寧に弾くことで上達に近づくことができます。
・ルート音だけを弾く「ルート弾き」
ルートとは「根音」とも呼ばれ、コードを構成している音のなかで最も低い音のことを指します。例えば、Cコードは「C(ド)・E(ミ)・G(ソ)」という3つの音で構成されているため、Cコードのルート音は「C(ド)」ということになるのです。そして、このルート音だけを一定のリズムで弾く練習のことをルート弾きといいます。
ルート弾きはベース初心者の方でも簡単に取り組めますが、さまざまな楽曲で登場するため非常に重要な練習です。最初はゆっくりとしたスピードで練習し、弦を押さえる位置が変わる際に音が途切れないよう注意しましょう。
まとめ
今回は、ベース初心者が覚えておきたい基本的な知識について解説しました。ベースは地味な楽器というイメージを持たれがちですが、バンド演奏の土台を支え、時には主役のようなかっこいいサウンドも出すことができる魅力的な楽器です。
まずは基本をしっかりと確認し、毎日少しずつでも継続して練習することで、着実に上達を目指していきましょう。