ミュージカル『アニー』は、1977年にブロードウェイで初演され、日本でも1986年から長く上演が続いてきた作品です。新聞連載のコミック「小さな孤児アニー」を原作に、大恐慌時代のニューヨークで、孤児の少女が家族を得るまでを描きます。この記事では物語の流れを追いながら、各場面の劇中歌も併せて紹介します。
※結末まで触れます。予習として読む前提でどうぞ。
第1幕
孤児院の朝 ― 「メイビー」「ハード・ノック・ライフ」
1933年、ニューヨークの市営孤児院。11歳のアニーは、赤ん坊のころに両親が残した手紙と、ロケットの半分を宝物にしています。「いつか迎えに来る」という手紙の言葉を信じ、両親を想って歌うのが『メイビー(Maybe)』。一方、孤児院は酒びたりの院長ミス・ハニガンに支配されており、少女たちが過酷な暮らしを歌うのが『ハード・ノック・ライフ(It’s the Hard Knock Life)』です。
脱走と出会い ― 「トゥモロー」
両親を探すため孤児院を抜け出したアニーは、街で野良犬と出会い、サンディと名づけます。寒い路上で、行くあてもないまま歌うのが『トゥモロー(Tomorrow)』。この歌の意味は別記事で詳しく解説しています。アニーは警官に見つかり、孤児院へ連れ戻されます。
大富豪の屋敷へ
億万長者オリバー・ウォーバックスの秘書グレースが、クリスマスの2週間、孤児を一人屋敷に招きたいと孤児院を訪れます。選ばれたのはアニー。豪邸での暮らしに戸惑いながらも、アニーは持ち前の明るさで使用人たちの心をつかみ、やがて仕事一筋だったウォーバックスの心も動かしていきます。ニューヨークの街を歩く場面の『N.Y.C.』は、この幕の華やかな見せ場です。
本当の両親を探して
ウォーバックスはアニーを養女にしたいと申し出ますが、アニーが望むのは本当の両親との再会。ウォーバックスはラジオで両親探しを呼びかけ、多額の謝礼を約束します。これを聞きつけたのが、ミス・ハニガンの弟ルースターとその相棒リリー。三人は謝礼を横取りする計画を企てます。悪だくみを歌う『イージー・ストリート(Easy Street)』は、悪役側の名ナンバーです。
第2幕
偽の両親
ラジオ放送をきっかけに、自称「アニーの両親」が次々と現れますが、いずれも偽物。そこへルースターとリリーが、ハニガンから聞き出した情報(ロケットの片割れ)を使い、本物そっくりの両親として名乗り出ます。
ワシントンへ ― 「トゥモロー」再び
一方、ウォーバックスはアニーを連れてワシントンへ。ルーズベルト大統領と閣僚たちの会議で、不況の打開策に行き詰まる大人たちを前に、アニーが『トゥモロー』を歌い、場の空気を変えます。
真実と結末
FBI の調査で、アニーの本当の両親はすでに亡くなっていたことが判明。そして偽の両親の正体も暴かれます。ルースターたちは捕らえられ、ミス・ハニガンの企みも露見。アニーはウォーバックスの養女となり、グレース、使用人たち、そしてサンディとともに、新しい家族としてクリスマスを迎えます。終盤の『アイ・ドント・ニード・エニシング・バット・ユー(I Don’t Need Anything But You)』は、二人が「家族になる」瞬間の歌です。
物語の構造 ― なぜ分かりやすいのか
『アニー』が初めての観劇に向いているのは、物語の軸が一本だからです。「アニーは家族を得られるか」― この問いだけで2幕が進み、悪役も動機が明快(お金)。子どもが追える単純さと、大恐慌という時代背景の重みが同居しているのが、この作品の長所です。
上演情報は公式サイトでご確認ください。
そして、「一人の少女が家族を見つける物語」の余韻で、別の「居場所を見つける物語」も。
▶ 居場所を探す物語を、もうひとつ読んで聴いてみる
『flehmen(フレーメン)』第1話 ― 猫人間たちのバンド物語、その開幕
聴きどころ:場面に楽曲が流れ込む「読んで聴く」形式。一人の歌い手が仲間と出会うところから始まります。
→ 『flehmen』第1話を読んで聴く
文責:motet 編集部

