リズムの土台を築き、バンドの大黒柱として重要な役割を持つドラムは、男女ともに人気のある楽器です。しかし、いざドラムを始めたいと思った時に「どんな練習から始めればいいのかわからない」という方も多いのではないでしょうか。ドラムは持ち運びが難しく、練習環境も限られているため、限られた場所と時間の中で効率良く練習する方法を知ることが大切です。
本記事ではドラム初心者の方がやるべき練習方法を紹介します。練習を始める前に必要な基礎知識や、上達するためのポイントなども解説していますので、ぜひ最後までチェックしてみてください。
ドラム初心者が知っておくべき基礎知識
・ドラムセットの構成
まずは、ドラムセットを構成している楽器について確認しておきましょう。ドラムセットには複数のドラムやシンバルがセットされており、それぞれに名称がついています。
– スネアドラム
スネアドラムは、ドラムセットの中でも比較的使用頻度の高いドラムで、リズムを刻む役割を担っています。スネアドラムはリズムの要となる重要なドラムであるため、自分専用のスネアドラムを購入している方も多いです。
スタジオで用意されているスネアドラムとは違うサウンドを楽しみたい方や、お気に入りのスネアドラムを見つけた時には購入を検討してみましょう。
– バスドラム
バスドラムは最も大きいドラムであり、低音を担当します。また、打面の反対側にはメーカー名などが大きく印字されるため、ドラムセットの印象を左右する存在です。
他のドラムはスティックを使って叩きますが、バスドラムはキックペダルを踏むことによって音を出すという特徴があります。そのため、自分に合ったキックペダルを見つけて練習することも重要です。
– タムタム・フロアタム
バスドラムの上に設置しているものをタムタムと呼び、大きめのタムを「ロータム」、小さめのタムを「ハイタム」といいます。基本的には両方使いますが、片方を外す「ワンタム」というセッティングがあることも覚えておきましょう。
また、床に直接置いているタムがフロアタムで、バスドラムの次に低い音を出すことが可能です。主にビートを刻む場合やアクセントに使われ、ドラムソロなどでも使用されます。
– ハイハット
スタンドに2枚重ねのシンバルがついている楽器がハイハットです。スティックで叩くだけでなく、ペダルを踏むことによっても音を出すことができるため、自由度の高い楽器となっています。また、主にリズムキープのために使用され、上下のシンバルを開閉することで音が出る長さを調整できる点が特徴です。
– クラッシュシンバル
基本的にドラムセットの左右にセットされ、「シャーン」という華やかで大きな音を出すことができる楽器がクラッシュシンバルです。伸びの良い高音を出すことができるため、主にアクセントをつけるために使用され、「サイドシンバル」と呼ばれることもあります。
– ライドシンバル
ドラムセットに組み込まれているシンバルのなかで最も厚く、サイズも大きい楽器がライドシンバルです。基本的にはフロアタムの上付近にセットされ、リズムを刻むために使用されます。ライドシンバルは叩く位置によって音色が大きく変わるため、さまざまな使い方ができるのが特徴です。
・楽譜の読み方を覚える
ドラムはフレーズや曲の練習を行う際に楽譜を使用するため、ドラム用の楽譜の読み方も身につける必要があります。一般的な楽譜とは異なり、音符に加えて×印などの記号も使われているため、はじめは慣れるまで時間がかかるかもしれません。
そのため、まずは使用頻度の高いハイハット・スネアドラム・バスドラム・クラッシュシンバルを優先で覚えましょう。その他のライドシンバルやタムタムなどの楽器は、練習を続けていくなかで徐々に覚えていけば問題ありません。
ドラムを練習するために必要なもの
・ドラムスティック
ドラムの練習を始めるためには、ドラムスティックを用意する必要があります。しかし、ドラムスティックひとつをとってもさまざまなサイズや材質のものがあり、各種使い心地や音の出し方が異なります。
ドラムスティック選びで迷った方や、初心者さんにおすすめなのがヒッコリーのドラムスティックです。ヒッコリーのドラムスティックは軽くて丈夫なため、幅広いジャンルに対応することができます。また、最もスタンダードなサイズは「5A」と言われています。ドラムスティックを選ぶ際は参考にしてみてください。
・メトロノーム
正確なリズム感を鍛えるためには、メトロノームも欠かせません。メトロノームを使わずに練習を続けてしまうと、リズムが狂っていても自分では気づけない場合があります。正しいリズムをキープできるように、練習の際はメトロノームを持参するようにしましょう。
・練習パッド
練習パッドとは、音を鳴らさずにストロークの練習ができるアイテムです。振動や騒音を軽減できるため、自宅で練習する際にも安心して使用することができます。練習パッドは単体で机などに置いて使用するタイプや、スネアスタンドに取り付けるタイプなどがあります。自分の練習方法に合ったものを選びましょう。
・ドラムセット
実際のドラムセットを用意できれば好きな時に練習することができますが、設置スペースや防音設備などの問題があるため、自宅にセットすることは難しい方も少なくありません。そんな時におすすめなのが、電子ドラムです。電子ドラムであればヘッドホンをつなげることができるため、騒音の心配もありません。
ただし、実際にドラムを叩く感覚とは大きく異なるため注意が必要です。本格的な練習やリハーサルを行う際は、スタジオを利用するようにしましょう。
・教則本
ドラム初心者が独学で練習を行う場合、教則本があると便利です。教則本が手元にあることで、不明点をすぐに調べられることはもちろん、ドラムの基礎を体系的に学ぶことができます。なお、教則本を選ぶ際は、フォームを動画で確認できるDVDなどが付属しているタイプがおすすめです。
ドラムの練習場所を決める
・自宅
ドラムはギターのように気軽に持ち運ぶことが難しいため、練習場所がなくて困っている方も多いのではないでしょうか。練習場所によって用意するものも変わります。自分に合った場所で練習していきましょう。
まず、練習パッドや電子ドラムを購入して、自宅で練習するという方法があります。自宅に電子ドラムがあれば好きなタイミングで練習でき、上達スピードも早いでしょう。
しかし、電子ドラムにヘッドホンを接続して練習したとしても、ドラムを叩くとどうしても音は発生してしまうため、マンションやアパートに住んでいる方は注意が必要です。なお、電子ドラムの価格はモデルにもよりますが、3~7万円程度で購入することが可能です。
また、練習パッドであれば騒音の心配もなく、スペースも取らないため気軽に練習することができますが、練習パッドだけでは実際にドラムを叩けるようにはなりません。あくまで、スティックの振り方やパターンの練習を目的に使うようにしましょう。
・スタジオ
実際にドラムを使用し、騒音などの心配もなく練習したい場合はスタジオを利用しましょう。スタジオであれば既にドラムもセッティングされており、ドラムのレンタル料なども不要で使うことが可能です。ただし、スタジオのレンタル費用は支払う必要があり、1時間につき500~1,000円程度が相場となっています。
・ドラム教室
本格的にドラムを始めたい方は、ドラム教室に通うのもおすすめです。講師がドラムの基礎からしっかりと指導してくれるため、上達のスピードも早くなるでしょう。
ただし、料金の相場が1時間5,000円程度となっているため、月に何回も通うことが難しく感じる方もいます。そのため、月に数回だけドラム教室に通い、自宅やスタジオで自主練習を行うという方も多いです。
プロの指導を受けて少しでも早く上達したいという方は、ドラム教室に通うことも検討してみてはいかがでしょうか。
ドラムの練習を始める前に覚えるべき基本姿勢
・ドラムスティックの持ち方
まず、スティックの持ち方を練習するときは、グリップの部分を人差し指の第一関節と親指で挟みます。次に、残り3本の指をスティックに添えるようにして持ちましょう。
この時、初心者の方はスティックを強く握りすぎないように注意してください。スティックを握る力が強いと疲れやすくなりますし、腕の動きも固くなってしまいます。そのため、親指と人差し指以外は力を抜き、リラックスして振るようにしましょう。
・スローンの座り方
ドラム用の椅子をスローンと呼びますが、座り方にも注意が必要です。深く腰掛けてしまうと足の動きが制限されてしまうため、スローンには浅く座るようにしましょう。また、両足をペダルに置き、膝の角度が上がりすぎていない状態になるようにスローンの高さを調整します。足が90度以上の角度になる高さが目安ですが、自分が楽にペダルを踏めるポジションを探してみてください。
・基本的な構え
ここでは、使用頻度の高いハイハット・スネアドラム・バスドラムを叩く場合の基本的な構えを解説していきます。まず、右手を上にしてスティックをクロスさせ、右手でハイハットを、左手でスネアドラムを叩きましょう。続いて、右足はバスドラムペダルに乗せ、左足はハイハットペダルに乗せます。こちらが基本的な構えとなっているため、練習を始める前に覚えておきましょう。
・スネアドラム・ハイハット・バスドラムの叩き方
まず、スネアドラムは左手を使い、中央あたりを叩くようにします。スネアドラムは叩く位置によって音が変わりますが、はじめは自分が狙った位置を正確に叩けるようになることが重要です。また、叩いた後にスティックが変な方向に跳ね返らないよう、打面から1~2cm浮いた場所で留めることも意識してみてください。
続いてハイハットは、スティックの先端ではなく、少し下のショルダー部分で叩きます。力は入れすぎず、リラックスした状態でリズムを刻んでいきましょう。なお、ハイハットは左足のペダルで開閉できますが、基本的には閉じたまま練習を行います。
最後にバスドラムですが、ペダルを踏む時はかかとを少し上げておきます。これを「ヒールアップ奏法」といいますが、ヒールアップ奏法は多くのジャンルで使用される踏み方のため、初心者のうちに習得するとさまざまな曲が演奏しやすくなります。
基本的には、バスドラムを叩かない時も軽くペダルを踏んでおき、叩く時には「ペダルを少し浮かせたらすぐに踏み込む」というイメージを持ちましょう。ペダルを浮かせた後に踏み込むことで、ペダルのスプリングの動きを利用でき、迫力ある音を出すことができます。
ドラム初心者におすすめの練習方法
・それぞれのテンポでストローク練習
まずは、4分音符・8分音符・3連符・16分音符のテンポに合わせて、正確にストロークできるよう練習していきます。この時、リズム感を覚えるためにメトロノームに合わせて叩くことが重要です。
また、左右交互に叩くことを「シングルストローク」といい、左右2回ずつ叩くことを「ダブルストローク」といいます。シングルストロークに慣れたら、ダブルストロークの練習もしてみましょう。
・チェンジアップ
チェンジアップとは、同じテンポで叩きながら4分音符・8分音符・3連符・16分音符と、1小節ごとに音符数を増やしていく練習です。一方、音符数を減らしながら叩いていく練習をチェンジダウンといいます。チェンジアップを行うことでリズム感が身につけば、さまざまなテンポの楽曲に対応することができるでしょう。
・8ビートの練習
8ビートとは、8分音符がベースとなっているパターンであり、ドラム初心者の方が最初に練習するリズムです。多くの楽曲で使われているため、まずは8ビートからマスターしていきましょう。なお、練習にはハイハット・スネアドラム・バスドラムを使い、具体的な練習方法は以下のとおりです。
- ハイハットを8回叩く(ペダルは踏んでおく)
- ①の3回目、7回目に合わせてスネアドラムを叩く
- ①の1回目、5回目、6回目に合わせてバスドラムを踏む
いきなり3つ同時に叩くのは難しいため、まずはひとつずつリズムを確認しながら練習していきましょう。
・4ビートの練習
4ビートとは、4分音符をベースとしたパターンのことです。8ビートの練習ではハイハットを8回叩きますが、4ビートの場合は4回となります。練習の手順は以下のとおりです。
- 8拍のうち「1・3・5・7」のタイミングでハイハットを叩く
- 「3・7」のタイミングでスネアドラムを叩く
- 「1・5・6」のタイミングでバスドラムを踏む
8ビートと比べてドラムを叩く回数は半分になりますが、実際に練習すると手足のリズムを合わせるのが難しく感じるかもしれません。はじめはゆっくりとしたテンポで、確実に合わせられるように練習してみてください。
・16ビートの練習
16ビートとは、16分音符がベースのパターンであり、1小節にハイハットを16回叩きます。テンポが速くて難しいため、慣れるまではハイハットとスネアドラムだけで練習してみましょう。16ビートの練習方法は以下のとおりです。
- 右手からスタートし、左右交互にハイハットを16回叩く
- 16拍のうち「5・13」のタイミングで、右手でスネアドラムを叩く
なお、ハイハットとスネアドラムが問題なく叩けるようになったら、バスドラムを「1・5・9・13」のタイミングで入れていきましょう。
・頭打ちの練習
頭打ちとは、主にロックやパンクなどのジャンルで使われるパターンであり、小節の頭にスネアドラムを入れていきます。8ビートで練習する場合の手順は、以下のとおりです。
- ハイハットを8回叩く
- 8拍のうち「1・3・5・7」のタイミングでスネアドラムを叩く
- 「6・8」のタイミングでバスドラムを踏む
頭打ちの練習では、バスドラムを踏むタイミングがずれないよう注意しましょう。
・裏打ちの練習
裏打ちは、頭打ちとは逆で小節の裏にハイハットを入れることによってリズムをとっていくパターンです。裏打ちが使われている曲は「縦ノリ」と表現されることが多く、主にJ-POPやロックなどで使われています。裏打ちの練習方法は以下のとおりです。
- 8拍のうち「2・4・6・8」のタイミングでハイハットを叩く
- 「3・7」のタイミングでスネアドラムを叩く
- 「1・3・5・7」のタイミングでバスドラムを踏む
裏打ちは手足の動きがバラバラになるため、最初は難しく感じるかもしれません。まずはそれぞれのタイミングを練習し、リズムを体で覚えてから合わせていくといいでしょう。
ドラムに慣れてきたら挑戦したい練習
・ダブルキック
バスドラムを2回連続で踏むことをダブルキックといいます。スティックのダブルストロークよりも難易度は上がりますが、ダブルキックができるようになれば演奏の幅は広がります。
ダブルキックのコツは、ビーターが打面から跳ね返ってくる時の「リバウンド」を利用して踏み込むことです。また、リバウンドの力を利用するため、ビーターを打面に押しつけないことも意識しましょう。初心者の方が習得するには時間がかかる傾向にあるため、焦らず練習してみてください。
・フィルイン
フィルインとは日本語で「埋める」という意味の言葉であり、パターンの最後や曲調が変わるタイミングで即興のリズムを叩くことを指します。フィルインには基本的なパターンがありますが、特別な決まりはないためドラマーのセンスが問われるテクニックです。
フィルインができるようになれば、演奏にアクセントをつけることができます。ドラム初心者の方がいきなりフィルインを叩くのは難しいですが、基本的なパターンをマスターしたら挑戦してみてください。
ドラムの練習で押さえておきたいポイント
・飽きずに基礎練習を続ける方法
ドラムの上達には基礎練習が欠かせません。しかし、基礎練習は単調なメニューも多いため、毎日続けていると他の練習を行いたくなることもあるでしょう。基礎練習に飽きを感じた時は、自分なりのゴール設定を作ることで、基礎練習にゲーム性を持たせることができます。
例えば、「8ビートを1分間、間違えずに叩けるようになる」という目標を設定します。ドラムを叩く順序はもちろん、リズムもずれないように注意して叩けるようになれば、しっかりと実力が身についていくでしょう。
・力を抜いて楽に叩く
ドラムを叩く時は、全身に力が入りがちです。余計な力が入ったまま練習をしてしまうと、すぐに疲れて集中力も続かなくなってしまいます。常にリラックスした状態を保ち、インパクトの瞬間だけ力を入れるように意識してみてください。短時間の練習で疲労感を感じる方は、どうすれば楽に叩けるのかを考えながら練習しましょう。
・いきなり曲の練習から始めない
「早く曲を演奏できるようになりたい」という気持ちはあると思いますが、いきなり曲の練習を始めてしまうと挫折の原因になる場合があります。どの曲を演奏したいのかにもよりますが、基礎が固まっていない状態で曲を演奏するのは非常に難しいです。
しかし、先述した8ビートや4ビートをしっかりマスターすれば、ほとんどの曲で応用できます。遠回りだと感じるかもしれませんが、実力をつけるには基礎が重要なので、まずは基本的なビートの練習を行いましょう。
・バスドラムが一番大きな音になるように意識
バスドラムはリズムベースと低音という2つの役割を担っています。バスドラムの音がしっかりと出ていれば曲全体が締まり、他の楽器もリズムを合わせやすくなるでしょう。
しかし、ドラム初心者の方の中には手の動きに集中してしまい、バスドラムを踏む力が弱くなる方もいます。はじめは音量まで意識する余裕がないかもしれませんが、慣れてきたら音全体のバランスも考慮して、バスドラムが最も大きな音になるように練習してみてください。
ドラム初心者の練習におすすめの曲
・10-FEET「第ゼロ感」
10-FEET「第ゼロ感」は、映画「THE FIRST SLAM DUNK」の主題歌として製作された曲です。イントロから熱量が伝わってテンションが上がりますが、ドラム初心者の方が身につけたいフレーズが多く盛り込まれているため、練習曲にも向いています。まずはゆっくりとしたテンポからスタートし、確実に叩けるように練習してみてください。
・Nirvana「Smells Like Teen Spirit」
Nirvana「Smells Like Teen Spirit」はコピーバンドにおいても大定番の曲です。ロック好きではない方も一度は耳にしたことのある曲ではないでしょうか。全体的にシンプルな構成でテンポも速くはないため、ドラムの練習曲にぴったりです。イントロのパターンは練習を要する箇所のため、リズムがずれないように注意しましょう。
・Deep Purple「SMOKE ON THE WATER」
Deep Purple「SMOKE ON THE WATER」は、イントロのフレーズが印象的なハードロックの定番曲です。ギターの定番曲としてよく紹介されますが、ドラムの練習にも適したフレーズが多く盛り込まれています。演奏できるようになれば他の曲でも応用がきくため、ぜひチャレンジしてみてください。
まとめ
今回は、ドラム初心者の方がやるべき練習方法や注意点、上達するためのポイントなどについて解説しました。基礎練習は単調に感じるかもしれませんが、最初に基礎をしっかりとマスターすることができれば、ドラムの上達も早い傾向にあります。ぜひ本記事で紹介した内容を参考にしながら、ドラムの練習に取り組んでみてください。